研究課題/領域番号 |
24560027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中嶋 薫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80293885)
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キーワード | 半導体物性 / ドーパント / 表面・界面物性 / イオン散乱分光 / 二次イオン質量分析 |
研究概要 |
本研究は、シリコン基板などの半導体単結晶中のドーパント(ホウ素やリン、ヒ素など)を、高感度かつサブナノメートルの空間分解能で深さ方向分析をするためのイオン散乱分析法の開発(改良)を目的としている。 1.昨年度に引き続いて研究代表者の所属する研究室にある高分解能ラザフォード後方散乱(高分解能RBS)分析装置を用いて、ドーパントを模した軽元素(リチウムなど)をシリコン基板またはグラファイト基板に薄く(厚さにして1~数ナノメートル程度)蒸着した試料を、実際に高分解能弾性反跳粒子検出法(高分解能ERD)で分析し、深さ分解能および感度の評価を実施した。 2.上に並行して、数~数10キロ電子ボルトの低速イオンを標的試料に表面から1度程度のすれすれに照射したときに表面から放出される二次イオンの質量分析を行い、二次イオン質量分析法のもつ高感度という利点に加えて、高い深さ分解能と定量性を満たす分析手法の可能性について基礎的な検討を行った。実験では試料としてフッ化リチウムの単結晶を用い、ネオンやキセノンなどの希ガスイオン(または希ガス原子)のビームを使用した。リチウムの正イオン、表面の吸着物に起因すると思われるプロトンの放出が認められたが、二次イオン収率が極めて低い(散乱イオン10万個あたり1個程度)ことが分かった。核種や運動エネルギー、入射角度が同じでも、イオンを入射したときと中性原子を入射したときで放出される二次イオンの質量分布が異なることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年12月に専攻のキャンパス移転にともなって、高分解能RBS分析装置の移転を行った。その際にエネルギー分析管の不具合が見つかったため、分析管の再製作を行った。加えて、試料の母材物質からの散乱イオン・反跳イオンを阻止するためのマイラー膜から発生する二次電子が検出器に到達することによって、ドーパントに対する感度向上を妨げていることが分かったので検出部の改良が必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、高分解能RBS分析装置の分析管、検出部の不具合などにより再製作や改良が必要になったため研究の進行が遅れており、申請時に計画していたアトムプローブ法による分析もまだ実施できていない。当研究室で実験の実施が可能な、すれすれ散乱イオンを用いた二次イオン質量分析法をアトムプローブに代わる高感度分析法として採用し、高分解能RBSまたは高分解能ERDと組み合わせて、高感度かつ高い深さ分解能と定量性を満たす分析を提案できるのではないかと計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度(平成24年度)の研究室(当研究課題に関連の実験装置を含む)のキャンパス移転のために研究の進行が遅れたことや、当初予定していた消耗品類の購入を一部見送ったため。 おもにイオン減ガスなどの消耗品の購入、成果発表のための学会参加のための旅費に使用する予定。
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