研究課題/領域番号 |
24560028
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齊藤 結花 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90373307)
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キーワード | ナノ材料 / 走査プローブ顕微鏡 / 超精密計測 / プラズモニスク |
研究概要 |
本研究では、光を用いて非破壊的に分子配向のナノ・イメージングを実現する新たな装置を作製し、次世代微小デバイス開発に強力なツールを提供することを目的としている。ここでは近接場光学の特徴を生かしたユニークな偏光測定とラマン分光を組み合わせることで、ナノメートルの空間分解能をもって試料分子のxyz3軸方向の完全な“配向”を高い精度で決定できる手法を開発する。本年度では以下を達成することができた (1)近接場における偏光の定量的評価 近接場プローブ先端のデフォーカスイメージを取得し、そのイメージをもとに数値解析を行うことで、プローブの形状に依存する近接場の偏光成分の割合を確認する方法を開発した。この測定方法は、定量性をもって近接場における偏光状態を測定できるという点で、画期的な手法である。 (2)定量的な近接場偏光ラマンイメージング 偏光状態を定量的に解析した近接場プローブを用いて、カーボンナノチューブの近接場ラマン分光イメージを取得した。得られたイメージのコントラストは、理論的な予想とよい一致を示し、ここで確立した見積もりが正しいことを証明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は近接場光学顕微鏡における偏光測定法の確立を目指している。昨年度まで測定の定量性が不足しており、測定結果から実際の試料の構造について数値を持って議論することができなかったが、本年度データの解析方法を検討し改良することで、これまで困難であったナノスケールの偏光測定に定量性を持たせることが可能になった。また、ここで行った偏光評価方法が妥当であることを、標準試料であるカーボンナノチューブを用いて確認することができた。このような研究の進展により、未知試料を対象にした近接場光学顕微鏡における偏光測定方法を実践することが可能になったので、順調な進展であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ペンタセンは有機半導体の有力な候補として注目を集めている。ペンタセンは基板上に薄膜を形成させると、生成条件によって不均一なドメイン構造を作ることがある。各ドメインはサブミクロンからナノスケールの微細構造から形成され、空間的に異なる分子配向角度で分布している。このような結晶の不均一性はデバイスとして用いる場合、伝導性に大きく影響する。本研究で開発した近接場光学顕微鏡におけるナノスケール偏光測定技術を用いて、ペンタセン等の分子性薄膜の評価を行うことを予定している。また近接場における定量的な偏光解析を簡便に行うためのプログラムを作製して、測定の効率を向上させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
近接場光学顕微鏡において、試料の特定部位をターゲットにした偏光測定を行うために、まず試料の視野を検出器に投影してから測定を開始するための機構を設けた分光器と電動スリットを購入する予定があった。しかしスリットの開発がおくれたために購入を先送りし、先に近接場プローブ周辺の評価に関する研究をすすめることにした。 近接場光学顕微鏡はナノスケールの空間分解能を持つ測定法であるため、観察視野は非常に狭い。従ってサンプルを広い範囲に渡って観測してから、特定の視野を決めることは近接場光学顕微鏡測定の自由度を向上させるうえで重要である。今後は上で示した分光器システムを装置に取り込んで、測定の視野を選びながら実験を行うことを計画している。
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