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2014 年度 実施状況報告書

偏光近接場ラマン顕微鏡による分子配向ナノ・イメージング法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24560028
研究機関大阪大学

研究代表者

齊藤 結花  大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90373307)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードナノ材料 / 走査プローブ顕微鏡 / 超精密計測 / プラズモニクス
研究実績の概要

本研究では、光を用いて非破壊的に分子配向のナノ・イメージングを実現する新たな装置を作製し、次世代微小デバイス開発に強力なツールを提供することを目的としている。ここでは近接場光学顕微鏡において、プローブの偏光状態を正しく評価し、ナノスケール偏光ラマン分光を実現する手法を開発する。本年度では以下を達成することができた。
(1)近接場プローブの形状と偏光状態の関係を解明
励起レーザー光によって誘起される偏光状態は、近接場プローブの形状と密接な関係がある。近接場プローブ先端のデフォーカスイメージを取得し、そのイメージをもとに数値解析を行うことで、プローブ先端の作る電気双極子の方向を決定することができる。プローブの形状が球形に近いほど、入射偏光の特性を反映してダイポールの向きが変化することが分かった。一方プローブ先端形状に異方性があると、このダイポールの向きは特定の方向に偏り、入射偏光方向を乱すことがわかった。
(2)偏光をコントロールした近接場偏光ラマンイメージング
入射偏光の方向を空間位相変調器を用いて変化させ、偏光状態を定量的に解析した近接場プローブを用いて、カーボンナノチューブの近接場ラマン分光イメージを取得した。その結果、特定の配向を持つナノチューブを入射偏光を変化させることで選択的にイメージングすることに成功した。本研究で確立した近接場偏光制御法がうまく機能していることを証明することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は近接場光学顕微鏡における偏光測定法の確立を目指している。昨年度まで偏光のコントロールという観点からの考察が不足しており、装置の実用性という点で問題があったが、本年度新たに空間位相変調器を導入したことで、近接場光学顕微鏡に積極的な配向選択制を持たせることが可能になった。ここで行ったナノスケールの偏光コントロールがうまく機能していることを、標準試料であるカーボンナノチューブを用いて確認することができた。このような研究の進展により、近接場光学顕微鏡における偏光測定方法に大きな自由度が生まれ、ナノサイズの試料の配向測定可能になったので、順調な進展であると考えている。

今後の研究の推進方策

ラマン分光をはじめとする振動分光は、大気中または溶液中において分子種の特定、分子間相互作用、配向分析を同時に行うことができ、生体高分子の高次構造解析に大きなポテンシャルを持っている。近接場ラマン顕微鏡による生体高分子の二次構造解析も、近年始まっているが、タンパク質二次構造の指標となるアミドIの振動が残基の構造によっては全く検出されないという報告もあり、近接場ラマン顕微鏡による二次構造の分析は難航している。ラマン分光の偏光測定は、分子振動エネルギー分析とは独立した物理量によって配向を決定することができるため、特定の分子振動に依存する必要がないという特長を備えている。偏光を制御した近接場ラマンイメージングを用いて、生体高分子の局所二次構造を分光学的に決定する手法を確立したい

次年度使用額が生じた理由

空間位相変調器(SLM)は、任意の偏光パターンを空間的に作り出し近接場光学顕微鏡のプローブ先端における偏光状態を制御するために欠かせない。このため、旧式の装置に変わって精度と自由度の高いSLMを購入する予定であったが、この装置の開発が遅れたために購入を先送りし、旧式の装置を用いて研究をすすめることにした。

次年度使用額の使用計画

近接場プローブ先端における偏光状態を制御するために、空間位相変調器(SLM)が必要である。近年SLMのテクノロジーが進歩し、これまでにない自由度と精度を持った偏光制御が可能になった。このような装置をシステムに導入することで、近接場光学顕微鏡の感度と精度を飛躍的に向上することが可能になる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Efficient UV photocatalysis assisted by densely distributed aluminum nanoparticles2015

    • 著者名/発表者名
      Honda M, Kumamoto Y, Taguchi A, Saito Y, Kawata S
    • 雑誌名

      J. Phys. D: Appl. Phys

      巻: 48 ページ: 184006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Temperature dependent photodegradation in UV resonant Raman spectroscopy2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshino H, Saito Y, Kumamoto Y, Taguchi A, Verma P, Kawata S
    • 雑誌名

      Analytical Science

      巻: 1 ページ: 000

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Individual TiO2 Nano-crystals Probed by Resonant Rayleigh Scattering Spectroscopy2014

    • 著者名/発表者名
      Honda M, Saito Y, Kawata S
    • 雑誌名

      APEX

      巻: 7 ページ: 112402-112405

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Quantitative Analysis of Polarization-Controlled Tip-Enhanced Raman Imaging through the Evaluation of the Tip Dipole2014

    • 著者名/発表者名
      Mino T, Saito Y, Verma P
    • 雑誌名

      ASC Nano

      巻: 8 ページ: 10187-10195

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ラマン分光イメージングによるカーボン材料の観察2014

    • 著者名/発表者名
      齊藤結花 奥野義人
    • 雑誌名

      月刊オプトロニクス

      巻: 1 ページ: 89-95

  • [学会発表] Tip-enhanced Raman Spectroscopy and Near-field polarization2015

    • 著者名/発表者名
      Yuika Saito, Toshihiro Mino, Prabhat Verma
    • 学会等名
      ICCMSE 2015 (International Conference of Computational Methods in Science and Engineering)
    • 発表場所
      Athens
    • 年月日
      2015-03-20 – 2015-03-23
  • [学会発表] Surface enhancement in UV with variety of nanostructures2014

    • 著者名/発表者名
      Yuika Saito, Satoshi Kawata, Atsushi Tagushi, Yasuaki Kumamoto, Mitsuhiro Honda, Prabhat Verma
    • 学会等名
      SPIE Optics and Photonics
    • 発表場所
      San Diego U.S.A.
    • 年月日
      2014-08-19 – 2014-08-19
  • [学会発表] Functions of Near-field probe in Tip-enhanced Raman Spectroscopy2014

    • 著者名/発表者名
      Yuika Saito, Toshihiro Mino, Prabhat Verma
    • 学会等名
      META14 (5th International conference on Metamaterials, Photonic crystals and Plasmonics)
    • 発表場所
      Singapore
    • 年月日
      2014-05-20 – 2014-05-23

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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