研究課題
化学反応機構を解析する最適な方法は,短寿命中間活性種(遷移状態)の生成過程やその時間変化を追跡することであるが,遷移状態の寿命は短時間のため容易ではない.そこで研究代表者らは,水素ラジカルとレジストとの反応に,本来気相-気相反応に適用されるアレニウス則を,以下の考えのもとで適用し反応時の活性化エネルギーを求めた.生成直後の水素ラジカルは「触媒体温度-1000℃」に相当する高い運動エネルギーを有するため,水素ラジカルとポリマーは通常は熱的非平衡状態にある.触媒体と基板との距離を100mm以上とし,水素ラジカルと気相中のガス分子との衝突回数を増加させ,水素ラジカルの運動エネルギーを緩和させた.衝突による水素ラジカルのエネルギー緩和を大きくするため,反応ガスにN2等の軽いガスを多量(90vol.%程度)に添加した.これは,窒素ラジカルの生成効率は水素ラジカルの1/10000程度であるため,ポリマーとの反応の影響は無視できる.上記の考えをもとに,水素ラジカルとレジストの非平衡反応にアレニウス則を適応することにより,水素ラジカルとノボラック系レジストとの反応の活性化エネルギーが19kJ/molであることを明らかにした.得られた活性化エネルギーより,水素ラジカルによるノボラック系レジストの分解反応の律則段階が,水素ラジカルによるレジスト中のベンゼン環の分解反応であると結論付けた.研究期間全体を通じて,ポリマー,レジストの化学構造,分子量等を系統的に変化させ,水素ラジカルによるポリマー,レジストの還元分解・除去速度に関する知見を集積した.ポリマーと水素ラジカルとを熱的平衡状態で反応させる技術(アレニウス則の適用)により,反応の活性化エネルギーを定量化し,解析が困難といわれる「ポリマー,レジストと水素ラジカルとの固相-気相の表面反応機構」を解明した.
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Thin Solid Films
巻: 575 ページ: 12-16
10.1016/j.tsf.2014.10.021
巻: 575 ページ: 17-20
10.1016/j.tsf.2014.10.020
巻: 562 ページ: 632-637
10.1016/j.tsf.2014.04.062
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/polymer/publication.html