研究課題/領域番号 |
24560035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
相澤 俊 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, 主席研究員 (00354431)
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研究分担者 |
末原 茂 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主任研究員 (00354374)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遷移金属ホウ化物 / 遷移金属炭化物 / エピタキシ |
研究概要 |
高融点化合物である遷移金属炭化物、ホウ化物のエピタキシャル成長を目的として、本年度は成長装置から解析装置へ真空を保ったまま移動する機構の開発を行った。移動中に真空度が落ちることを防止するために放出ガスの少ないTi合金製のチャンバーを作成し、これに非蒸発ゲッター(NEG)ポンプを組み合わせることによってサンプル移動中の表面汚染を防ぐことができた。 装置試験として、二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)単結晶基板上にホウ素とシリコンからなる非晶質薄膜をMBE装置にて蒸着し、表面解析装置でオージェ電子分光により表面組成分析を行った。従前通りの一旦大気中に取り出してから解析装置に導入する方法では、表面に酸素または水が吸着し試料表面が酸化されていることが確かめられた。このサンプルを加熱すると大量のガスが放出され、膜の組成が変化してしまう。これに対して新しく導入した試料移送機構を使用した場合、若干の吸着酸素はあっても従前のものとは桁違いに少なく、その後の加熱過程において放出されるガスもほとんど無く、成長した膜の解析が可能であることが確認できた。 試料移動機構の開発と平行して、遷移金属炭化物、ホウ化物のエピタキシ条件を確認するため、予備的な実験を解析装置内で行った。高融点化合物であるZrB2単結晶の(0001)面を基板として用い、炭化ジルコニウム(ZrC)を電子衝撃加熱で蒸着した。反射高速電子回折(RHEED)で観察した結果、室温で成長させた場合はエピタキシャル成長していないが、基板温度が1700Kではエピタキシャル成長していることがわかった。 これらの系における表面原子拡散やサーファクタントの吸着状態などの計算機シミュレーションを行うために、本年度はいろいろな計算手法のうちどの手法が適しているかの比較検討を行った。計算に必要な基底セットやポテンシャル等の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本地震の影響による建物建築の遅れから使用予定のMBE装置の新棟への移設が遅れたため、MBE装置の立ち上がりが当初の予定よりも遅れ、MBE装置を用いた実験は当初計画の通りには実行できなかった。また、Ti製の試料移送チャンバーの作成も新規開発要素が強く、いくつか問題が発生し完成が納期ぎりぎりとなってしまったため実験に取りかかる時期が遅れた。 このため解析装置内で予備的実験を行った。高融点基板ではあるが一応エピタキシャル成長することが確かめられたので、当初予定の半分は達成できたと思う。エピタキシする条件を調べるにはいろいろな条件で成長させる必要があるが、解析装置内の蒸着装置にはごくわずかのソースしか装填できないので、まだ条件出しはできていない。したがってやや遅れ気味であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
試料移送機構が使用可能となったので、MBE装置を使用した実験を加速して行い、条件出しと膜の解析を予定通りに行っていく。また、当初の予定にあった異種基板へのエピタキシャル成長も順次試していく。表面拡散を促進させるためのサーファクタントとしてはまず原子状水素を試してみる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記、達成度の自己評価にて記したように、実験に使用する予定のMBE装置の立ち上がりが遅れたため当該装置の使用料として計上していた予算が繰り越しとなった。また、それに伴い各種消耗品分も次年度使用となった。 平成25年度計画としては当初予定と変更無く、遅れを取り戻すべくMBE装置の使用を加速させて実験を行う。
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