研究課題/領域番号 |
24560035
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
相澤 俊 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, 主席研究員 (00354431)
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研究分担者 |
末原 茂 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主幹研究員 (00354374)
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キーワード | 遷移金属炭化物 / エピタキシ |
研究概要 |
本年度は成長させる膜として炭化ジルコニウム(ZrC)を取り上げ実験を行った。同じ結晶構造を持つ炭化ニオブ(NbC)の(111)表面上には1400℃できれいにエピタキシャル成長することが確かめられた。ZrC上ZrCのホモエピタキシー条件に関しては、成長時温度が室温ではすぐに島状成長して数原子層でも層状成長しなかったが、1200℃あるいは1000℃でも短時間ではあるが層状成長することがわかった。これより成長速度を遅くすることで融点に比べかなり低温であってもエピタキシャル成長が可能であることがわかった。 異種基板として酸化マグネシウムMgO(111)を用いて実験を行った。1300℃で成長を行った場合、一応エピタキシャル関係をもつ蒸着が可能ではあるが膜の平坦性、結晶性がかなり悪い。これを改善するため温度を上げると材料中の炭素と基板中の酸素が反応して炭素が失われ、酸化ジルコニウムの微粒子が発生してしまった。金属マグネシウムは蒸気圧が高いため蒸発したものと考えられる。(3MgO+ZrC→3Mg↑+CO↑+ZrO2) より低温で酸化物基板上に良好なエピタキシャル成長をさせるためにはなんらかのバッファ層が必要と考えられる。 成長温度を下げるために考えられるサーファクタントの候補としてシリコンを考え、シリコンのつくる表面構造を調べた。一原子層のシリコン(シリセン)がZrC(111)面上で安定な構造を作ることがわかった。本年度は既存のワークステーションを高速でつなぐネットワークを構築し、シリセンの物性を調べるために第一原理計算を行った。表面エネルギーや電子状態、フォノン構造などを計算し、高分解能電子エネルギー損失分光により得られた結果を解析した。シリセンはポストグラフェンとして注目されており、今後の発展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MBE装置と表面解析装置の真空中移動が割とスムースに行えるようになり、研究が動き出した。エピタキシーの確認として行ったZrCの成長でも比較的低温でホモエピタキシーすることがわかり、界面の重要性が浮き彫りになった。今後は下地の表面をいかに修飾してバッファ層とし、良好なエピタキシーを得るかを探索する。
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今後の研究の推進方策 |
酸化物基板は薄膜合成において広く用いられているため、この上に遷移金属炭化物やホウ化物をきれいにエピタキシャル成長することはインパクトが大きい。そのため、成長表面を安定化させるというよりは成長初期の界面を安定化させることがより重要と考えられ、酸化物基板表面でいかにバッファ層をつくるかの工夫に取り組む。 サーファクタント探索の副産物としてシリセンという、より応用可能性のありそうな表面物質を発見したので、今後はこちらも研究対象として取り上げていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
参加した学会の開催がつくば市内だったため国内旅費として計上していた分は繰越とした。 最終年度としてこれまでの計画を推進するとともにこれまで得られた成果を積極的に発表していく。
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