研究実績の概要 |
本年度は異種下地へのヘテロエピタキシを主に試みた。ZrC(111)表面上におけるシリセンの成長から、この両者の格子定数のマッチングが非常に良いこと、すなわちSi(111)の単位胞の√3倍がZrC(111)の単位胞の2倍と誤差0.2%以内で一致していることがわかった。そこで逆にSi(111)表面にZrCを成長させた場合にも良好なエピタキシが実現できるのではないかと期待して実験を行った。工業的に広く使われているSi表面上に良質なZrC膜を形成することができれば、応用上も意義が大きい。 Si(111)上にZrCをMBE成長させたところ、残念ながらその成長方位は期待したSi(111)の√3倍がZrC(111)の2倍と一致するような方位とはならず、Si(111)とZrC(111)が同じ方位、すなわち両者の格子定数の不一致(約16%)がそのまま残るような方位で成長した。界面の活性化のため下地のSi(111)に√3倍の表面長周期構造をつくるようなAg, Al, Gaなどの吸着系を試してみたが、成長方位は変化しなかった。成長表面は凸凹しており、あまり良質な膜ではなかった。また膜のオージェ電子分光により、下地のSiが成長膜表面に拡散してきていることがわかった。 ZrC(111)表面でのZrCのホモエピタキシは400℃以上の温度で層状成長することが確かめられた。ところが、ZrC(111)表面にシリセン(Si単原子層)が吸着していると、600℃でも層状成長せず成長表面が凸凹になってくることがわかった。上述の成長中に表面に拡散してきたSiが、MBE中のZrC表面拡散を阻害して成長表面が凸凹になるものと思われる。すなわちSiはサーファクタントとならないどころか、却って結晶成長を妨害していることが明らかとなった。
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