研究概要 |
H25年度は、イオン散乱におけるスピン軌道相互作用の解明に向け、様々な非磁性体標的を用いてスピン偏極イオン散乱分光計測を系統的に行った。具体的には、Ag, Re, Pt, Ir, Au, Pb, Biを標的に用い、1.57keVのスピン偏極He+イオンを用いた散乱分光から、散乱のスピン依存性(スピン非対称性)の入射角度、出射角度、散乱角度の依存性を調べた。その結果、スピン非対称性は入射角度と出射角度には依存しない一方、散乱角度には大きく依存することが明らかになった。さらに、この散乱角度θに対する依存性を詳細に調べた結果、標的が遷移金属の場合にはスピン非対称性はsinθcosθの依存性を示す一方で、標的が非遷移金属の場合にはsinθの依存性を示すことが明らかになった。これらのスピン非対称性の角度依存性は、He+-標的原子の二体衝突において形成される量子力学的な中間状態(He0 + A+; Aは標的)でのスピン軌道相互作用で説明できることが明らかになった。
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