H26年度は、昨年度までに行ってきた非磁性体を標的にしたスピン偏極イオン散乱分光計測をさらに進めた。とりわけ、Biを標的にした際の入射エネルギー依存性、入射角・出射角・散乱角に対する依存性、表面構造に対する依存性などについて詳細に調べた。その結果、スピン依存性散乱(スピン非対称性)が入射速度に対し振動することを見いだし、これが入射ヘリウムイオンの準共鳴中性で説明できることを示した。すなわち、非磁性体を標的にした際のスピン偏極イオン散乱分光において出現するスピン非対称性は、He+-標的原子の二体衝突において形成される量子力学的な中間状態でのスピン軌道相互作用に由来することが支持された。さらに再イオン化とスピン軌道相互作用によるスピン非対称性との関係を調べ、5d遷移金属を標的にした際のスピン非対称性の標的元素依存性は、再イオン化によりビーム偏極率が実効的に低下したことによることが明らかとなった。
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