研究課題/領域番号 |
24560037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 挙子 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (70357656)
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研究分担者 |
長谷部 光泉 東海大学, 医学部, 教授 (20306799)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノダイヤモンド粒子 / 表面化学修飾 / ガドリニウム / 核磁気共鳴画像 / 造影剤 |
研究概要 |
表面化学修飾法を利用することにより、生体親和性・化学安定性等の高機能を有するナノダイヤモンド(ND)粒子の特性を利用した、核磁気共鳴画像法(MRI)新規造影剤適用を目指したガドリニウム(Gd)担持ナノダイヤモンド粒子作製法の開発を目的とする。 当該年度においてはND粒子表面官能基に基づく有機化学反応を利用し、MRI造影能を有するGd担持ND粒子作製法について集中的に検討した。 ND粒子表面上には水酸基が多数存在することから、各種金属イオンとの高いキレート機能を有するジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)のカルボン酸基と、塩化チオニル存在下において脱水縮合反応を行うことにより、エステル結合を介してND粒子表面上にDTPA分子を化学修飾した。化学修飾処理後にXPS、FTIR、質量分析を行ったところ、XPSにおいては新たにN1s(398.9 eV)ピークが観測され、FTIRにおいてはカルボニル基由来のピークが観測され、質量分析においてもDTPA由来のフラグメントが観測されたことから、ND粒子表面上へのDTPA分子の化学修飾が確認された。 さらに、MRI造影能を有するGdイオンを錯形成させるため、DTPA修飾ND粒子に塩化ガドリニウム水溶液を作用させた。錯形成処理後に試料のXPS測定を行ったところ、新規にGd4d(141.3 eV)ピークが観測されたことから、Gd担持ND粒子が作製されたことが明らかとなった。特に、Gd4dピークについて市販MRI造影剤であるガドジアミドとの比較を行ったところ,ほぼ同位置にピークが観測されたことからもガドリニウムイオンの錯形成が示唆される。 原料であるND粒子については、粒径5, 50, 100 nmの試料を用いて上記の化学修飾反応およびGdイオン錯形成を行い、いずれの粒径でもGd担持ND粒子作製が可能であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は表面化学修飾法を利用することにより、MRI造影能を有するガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子の作製法を確立し、作製した金属含有ナノダイヤモンド粒子を利用した新規MRI造影剤開発を目的としている。 当該年度については、上記「9. 研究実績の概要」に記載した通り、表面官能基に適した有機化学反応を利用し、ガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子作製法を確立した。本方法は既報と比較しても大型反応装置や多段階反応を必要とせず、原料ナノダイヤモンド粒子から2段階でガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子を作製することに成功した。また、将来的に適切なナノダイヤモンド粒子径を特定するために、3種類の粒径を有するガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子も作製することを可能とした。 この成果について、国際誌論文掲載、国際学会口頭発表、国内学会口頭発表、所属研究機関一般公開を行うことにより、成果普及にも努めた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度については上記「11.現在までの達成度」に記載の通りに順調に進捗し、ガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子の作製が可能となった。25および26年度については、当初の研究計画に従って研究を推進する予定である。 具体的には、25年度については作製法を確立したガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子について、MRI撮像の事前準備として、ゼータ電位測定により分散性および粒径分布について確認することにより、各種溶液への分散最適条件を決定する。また、ICP-MS分析を行うことによりガドリニウム担持量を決定する。最適分散条件を用いたガドリニウム担持ナノダイヤモンド粒子分散液を用い、MRI装置によるT1およびT2強調画像撮像および緩和時間を測定し、従来造影剤との比較を行うことにより新規造影剤適用への可能性について検討する。 26年度についてはガドリニウム担持ナノダイヤモンド新規造影剤の将来的な体内動態について検討するため、正常肝細胞による細胞毒性実験を行うとともにガドリニウム-ナノダイヤモンド製剤としての安全性評価のため、熱力学安定性、溶解性、生体内錯塩の安定性評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、ナノダイヤモンド粒子表面上へのキレート分子化学修飾について、第1候補のジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の使用では計画通りに進捗しない場合、第2候補として1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸等の利用の検討も考慮していた。しかしながら、第1候補のDTPA分子で計画通りに進捗したため、試薬費として計上していた金額を25年度分として繰り越した。 25年度分としては、当初計画に従って材料費、試薬費、液体窒素代、ガラス器具購入費、依頼分析費等として使用する計画であるが、特に繰り越し分は本研究課題進捗に欠かせない純水を製造する製造機フィルター代として使用する予定である。
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