研究課題/領域番号 |
24560039
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉村 博幸 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90261354)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオメトリクス / 光情報処理 / 指紋認証 / 暗号化 |
研究概要 |
本年度は,研究代表者のサバティカル研修の年度であったため,4月中旬から8月下旬までは米国ウエストバージニア大学コンピューター科学・電気工学科のRoss准教授の下で,8月下旬から翌1月中旬まではノルウェーイョヴィーク大学コンピューター科学・メディア技術学科のBours准教授の下で,研究代表者がこれまで提案してきた非整数次フーリエ変換を利用した指紋テンプレートを利用した指紋認証精度の高度化に関する研究を行った。具体的には,指紋認証時において考慮すべきアライメント問題を踏まえて,Fingerprint Verification Competition (FVC) 2002で使用された指紋データーを用いて数値解析を行った。その結果,指紋認証精度が従来の手法に比べて高くなることを明らかにした。 一方,本テンプレートの攻撃耐性に関する研究については,非整数次フーリエ変換により得られた暗号化画像に対して,次数に差異を与えて非整数次フーリエ逆変換を行い復号化画像を得て,指紋原画像と復号化画像間のPSNRを数値解析により求めた。その結果,次数の差異が0.004以上あれば暗号化画像から指紋原画像の復元が非常に困難になることがわかった。さらに,非整数次フーリエ変換に関する検討だけでなく,非整数次コサイン変換,非整数次サイン変換についても,それぞれ振幅分布ならびに位相分布を利用して得られた指紋テンプレートについて再度詳細に検討を行う必要性があることがわかった。 なお,光空間周波数相関システムの光学実験に関する検討についてはやや遅れており,本相関システムを実際に光学系により構築している最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非整数次フーリエ変換を利用した指紋テンプレートを利用した指紋認証精度の高度化および攻撃耐性に関する検討は,概ね順調に進展している。しかし,サバティカル研修先において光学実験設備がなく,検討期間が短くなってしまったため,光空間周波数相関システムの光学実験に関する検討はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度十分検討できなかった「光空間周波数相関システムの光学実験に関する検討」を引き続き行う。また,非整数次フーリエ変換,非整数次コサイン変換,非整数次サイン変換の振幅分布や位相分布を利用した指紋テンプレートの攻撃耐性について,再度詳細に検討を行う。さらに,暗号化システムのオール光化の前段階として,1.暗号化システムの同時電子制御化の検討,並びにオール光化の検討のため,2.回折光学素子によるオール光暗号化システムの検討を行う。 1.暗号化システムの同時電子制御化の検討 これまで研究代表者が試作してきた暗号化システムでは,光学的非整数次フーリエ変換を実現するため,自動ステージ3台と液体レンズ1枚の電子制御を個別に行っていた。本研究の最終目的はシステムのオール光化ではあるが,その前段階として,これらすべてを同時に電子制御するためのシステムを構築し,本暗号化システムの高速化を図る。 2.回折光学素子によるオール光暗号化システムの検討 本暗号システムの高速化を目指し,光学的非整数次フーリエ変換を実現するために自動ステージや液体レンズを使用する代わりに,個人個人異なる指紋画像間においては同一ではあるが,指紋画像の各部分部分ごとに異なる次数の光学的非整数次フーリエ変換を実現させるための回折光学素子の設計開発を,コンピューターによる数値解析により行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策で記述した2の検討のため,LightTrans社製VirtualLab一式(Starter Toolbox)購入で1,775千円使用する予定である。また,今後の研究の推進方策で記述した1の検討のため,電子部品購入で150千円使用する予定である。それから,研究成果発表のための旅費として125千円を,1と2の検討に対する謝金のため50千円を使用する予定である。以上,合計2100千円を使用する予定である。
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