研究課題
本研究計画では、配列(分子軸の向きを実験室系に対して揃えること)した分子試料を媒質とすることによって、第三高調波の発生効率を最適化すること、およびその偏光を自由に制御することを最終的な目的に研究を進めてきた。その目的のため、これまでに、時間に依存する偏光を測定することができる干渉計を開発し、光学部品の固定法や干渉計の配置を改良することによって、最終的に紫外領域の超短パルスに対しても位相差でπ/20以下、楕円偏光の楕円率で0.1以下の精度で評価できる安定性を達成できた。以上のように開発した干渉計を使用し、配列した二酸化炭素分子から発生する第三高調波の偏光状態を観測したところ、位相整合の効果を反映して媒質の圧力によって偏光状態が大きく変化することを明らかにしている。一方、発生メカニズムを解明し、強度や偏光状態を制御するためには圧力依存性を系統的に調べる必要がある。そこで、最終年度は、試料セルと排気系を更新して圧力を精密・簡便・安定的に変化させられるように改良した。同時に、連続的な観測を行えるようにデータ取得プログラムを最適化した。このシステムを用いて圧力依存性を調べたところ、第三高調波の偏光状態は圧力とともに単調に増加するわけではなく、3ないし4段階ほどの異なる過程に分かれて振る舞うことが分かった。圧力の絶対値に違いはあるが、同様な傾向は窒素分子や酸素分子でも見られ、配列した気体を媒質とした時の第三高調波発生における一般的な現象であることを示唆している。同様な現象はより高次の高調波についても起こりうると考えられ、高調波の発生・伝播を含めて統一的に理解するためのシミュレーションコードを開発する予定である。
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Physical Review A
巻: 89 ページ: 051402
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevA.89.051402
巻: 90 ページ: 063403
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevA.90.063403