研究課題/領域番号 |
24560042
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
但馬 文昭 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10236523)
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キーワード | プラズモン効果 / エバネッセント波 |
研究概要 |
25年度は前年度得られた成果に基づいて、プローブとして100~200nm程度の太さの極細糸に白金を被覆した200~300nm程度の太さの白金被覆糸を、14nmまたは90nm程度の白金薄膜が形成されたプリズム面近傍に配置した系について解析解を求めるとともに実験を行った。解析解は、2本の2重円柱によるモデル(2円柱―2重円柱モデル)として求めることができた。実験では、まず、プローブとしての極細糸を採取し、これに白金を被覆した。波長660nmのレーザー光を当てて散乱光強度の角度分布を測定することにより、コアの太さと屈折率、被覆部分の外径と複素屈折率を求めた。 次に、プリズム上に膜厚14nmまたは90nm程度の白金薄膜を形成した。膜厚とその複素屈折率は、ATR法により測定した。その後、白金薄膜上に前述の白金被覆極細糸を配置し、プリズムに全反射する入射角度でレーザー光を入射させ、白金薄膜上に現れるエバネッセント光の散乱波を測定した。実験により得られたデータを2円柱―2重円柱モデルで計算したところ、2種のサンプルとも実験と計算が良好に一致した。この結果、目的のモデル及び実験装置の妥当性を検証できた。 なお、プリズム上に白金薄膜の形成過程で膜表面に予期せず幾何学的模様が現れ、その原因を調べるための表面観察用カメラや電子線回折による構造を調べるための装置を購入し、実験を行った。これにより模様が現れない膜形成条件を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の成果として検証できた2円柱モデルに基づいて、25年度では、理論面からはプリズム上に金や銀、白金等の貴金属薄膜を形成し、その上に 200~300nm程度の太さの貴金属被覆極細糸を配置し、これに全反射入射角でレーザー光を入射させて生ずるエバネッセント波を当てる系の2円柱―2重円柱モデルを構築することが目標であり、実験面からは、この系に対応する測定実験を行い、得られた実験データと計算結果を対照してモデルを検証することにより、プリズム面上の貴金属薄膜と空気の界面に存在する近接場の定量的な評価を可能とすることが目標であった。 結果としては2円柱―2重円柱モデルを構築し、表面が良質で安定している白金を用いた実験により理論を検証することができ、当初の計画を概ね達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は白金薄膜と空気の界面に存在するエバネッセント光(波)の定量評価モデルとして2円柱―2重円柱モデルを構築し、実験により検証できた。今後は、白金に代えてプラズモン効果がより大きく現れると考えられている銀や金を用いて実験を行う。 まず、ごく細い蜘蛛の糸に銀を被覆し、被覆後、糸の散乱光強度パターンを測定して対応する計算モデルで解析し、銀被覆糸の太さと複素屈折率(クラッド)、屈折率(コア)を予め求める。次にプリズムに銀薄膜を形成し、形成後、薄膜の厚さと複素屈折率を全反射減衰法(ATR法)により測定する。その後、糸をプリズム上の銀薄膜上に配置して実験を行い、測定データを2円柱-2重円柱モデルにより解析する。これにより、プラズモン効果の定量的な評価ができると考えている。 ごく細い糸に銀をコーティングするには、現有設備のイオンコーターを使用するが、ターゲット(消耗品)が必要になる。また、25年度の研究成果を英文誌に投稿するとともに、今年度の得られる成果を学会等で発表する等、3年間の研究成果をまとめる。
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