(1)プリズム上にスパッタ法により白金膜を形成し、ATR法により白金薄膜を形成し、その膜厚と複素屈折率を測定した。その結果、膜厚が12nmであり、複素屈折率がすでに知られているバルク値2.4+4.3iと一致することを確認した。 (2)276nmのコア径の誘電体極細糸に白金を被覆した極細糸を作成し、光散乱法によりその外径、白金部分の複素屈折率を測定した。その結果、外径が345nm、複素屈折率が2.0+0.3iであることがわかり、複素屈折率がバルク値と大きく異なることを見出した。 (3)(1)で形成した白金膜近傍に(2)の白金被覆糸を配置した系のサンプルを複数作成し、エバネッセント波及び平面波による散乱光強度測定実験を行った。得られたデータについて、2円柱―2重円柱モデルにより解析し、白金被覆糸の被覆部分の外径と複素屈折率、白金薄膜の複素屈折率を求めた。その結果、2種のサンプルとも実験に計算を良好にフィットでき、モデルの妥当性が明らかになった。また、白金被覆糸のみの場合の白金部の複素屈折率が白金のバルク値と異なること、及び白金被覆糸を白金膜近傍のプリズムに配置すると、白金膜の複素屈折率がバルク値から大きくずれ、実部虚部とも略半減することが明らかになった。また、白金被覆糸の白金部複素屈折率もある程度変化することも明らかになった。 白金被覆糸のみの場合の複素屈折率の変化は一種のサイズ効果によるものと考えられるが、白金膜の複素屈折率の大きな変化はそれとは異なる、これまでに知られていない新規の現象である。これは、白金被覆糸と白金膜の間に生ずる多重散乱による相互作用により、白金部の電子の挙動が変化したことによるものと考えられる。この白金の局所的な屈折率変化は、一種のプラズモン効果によるものと考えられ、プラズモン効果を定量的に理解する上での一歩が示されたと考えられる。
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