研究課題/領域番号 |
24560044
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
坂田 肇 静岡大学, 工学部, 教授 (40377718)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ファイバレーザ / 周期性マイクロベンド / 長周期ファイバグレーティング |
研究概要 |
1. ファイバレーザのファイバ共振器内Qスイッチング ファイバ共振器内に動的マイクロベンドを形成する方式でQスイッチ動作を実施した。マイクロベンド形成用ファイバとして、コア径の異なる数種類のシングルモードファイバ(SMF)を試した結果、1.3/1.55μm用SMFがON/OFF比において優れていた。このファイバを一組の波形プレートで挟み、ピエゾ素子を用いて変形させた。ファイバの可撓性を向上させるため、ファイバ被覆を熱圧着により偏平化させた。その結果、Qスイッチ動作時のパルス出力向上が得られ、励起レーザダイオード光強度154 mWに対し、最大で1.45 Wのパルス出力を得た。パルス幅は1.1μs、中心波長は1.9μmであった。 2. ファイバレーザのファイバ共振器内波長チューニング ファイバレーザの発振波長を制御するため、可変周期の長周期ファイバグレーティング(LPFG)を形成した。フォースゲージを用いて、コイルばねをファイバに圧着することでLPFGを形成した。コイルばねの伸縮に応じてLPFG周期が変わるため、伝搬コアモード-漏洩クラッドモード間で生じる共鳴波長のシフトを起こせる。LPFGでは複数の共鳴波長においてそれぞれ損失帯が形成されるため、この損失帯間に生じる通過帯を用いてレーザ共振器の利得スペクトルを操作した。LPFG単体ではレーザ発振波長の可変範囲は80 nm程度であったが、異周期のLPFGを組み合わせて操作することで1865 nmから1972 nmにわたって発振波長をシフトできた。 3. 磁力誘起による可変LPFGの形成 可変LPFGの損失振幅を電気的に制御することを目的として、磁力を利用する方式の検討を開始した。鉄製コイルばねをファイバを介して電磁石で誘引することで共鳴波長での損失帯を確認できた。今後、この方式を用いて波長可変制御の研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ファイバレーザの発振波長制御において、可変LPFGを構成し100 nmを超える波長可変範囲を得ることができた。一般的にファイバレーザの発振波長制御で使用される外部共振器グレーティングと異なり、全ファイバ構成の共振器内で実行できるため、高効率かつ安定なチューニング動作が期待できる。 可変LPFGの形成にはフォースゲージによる機械的圧着を現在用いているが、今回、磁力利用のマイクロベンド形成に成功した。現段階では測定評価の容易な1.5μm帯でErファイバレーザを用いて波長可変発振の実験を行っている。その結果、可変範囲は狭いが発振波長のシフトを確認できた。今後、波長制御方式を詰めていき、次段階として2μm帯での波長可変実験を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Qスイッチングによるパルス出力の向上については、波状プレートのデューティ比や周期を最適化し、マイクロベンドの波長選択損失の効率を向上させ、出力向上につなげていく。さらに、ピエゾ素子によるファイバ可撓性を高めるため、より柔軟性に優れたファイバを選択しQ値のダイナミックレンジを高める計画である。 波長可変制御については、電磁石を利用して可変LPFGの形成を行う。また、LPFGによる通過帯の有効な可変動作範囲を広げるため、LPFGのモード間結合の強さに分布をつける方策で、両脇の損失帯幅の拡張を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、広帯域赤外光源、ファイバ融着機、TmやEr等の添加ファイバ、マイクロベンド形成用ファイバ、励起用WDMファイバカプラ、出力用ファイバカプラ等を予定している。また、国際会議および国内会議での研究成果発表のため、旅費を予定している。
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