研究課題/領域番号 |
24560044
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
坂田 肇 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40377718)
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キーワード | ファイバレーザ / 可変マイクロベンド / 長周期ファイバグレーティング |
研究概要 |
(1)ファイバレーザのためのインファイバQスイッチング ファイバから光を取り出すことなく行えるQスイッチングの研究を進めている。今回、以下に示す方策を進めることで飛躍的な出力改善が得られた。 まず、ピエゾ素子によるファイバ可撓性向上のため熱成形プロセスを改善し、柔軟性を損なうことなく被覆層の偏平化が行えた。次に、ファイバ中に動的マイクロベンドを形成するための波状プレートの形状パラメータの最適化を図った。その結果、周期に関しては偏平化ファイバにおいて650μmがもっとも効率良く透過制御が可能であり、デューティ比では0.25が効率的であった。また、リング入力カップラとして励起波長1.63μmと発振波長1.93μmでクロス/パラレル結合効率に優れるWDMファイバカップラを導入し、励起効率向上ならびに共振器損失低減を行った。さらに、共振器からの出力結合を出力カップラの分岐比を調整することで制御し、出力の最適化を行った。 以上の結果として、半導体レーザからの擬似CW励起パワー154mWに対して、レーザパルス出力のピーク値42W(パルス幅1μs)を得た。 (2)電磁石駆動ファイバグレーティングを利用したインファイバ波長制御 電磁石を用いてファイバ中に長周期ファイバグレーティング(LPFG)を形成し、その周期を変えることでファイバレーザの発振波長を変えた。単一モードファイバを伝搬するコアモードを放射モードに変換する効率を電圧制御で行えるようになり、発振波長の再現性向上と切替え時間短縮が可能となった。上記方式による波長可変範囲を広げるため、LPFGの共鳴波長帯域を拡張し、その内部にパスバンドを形成する方式を進めている。今回、少モードファイバを利用し2つのコアモード間結合を利用することで共鳴帯域幅を広げることに成功した。今後、位相シフトを導入し、バンドパス型波長可変フィルタを構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本方式のインファイバQスイッチングをTmファイバレーザに適用することで、100mWクラスの励起半導体レーザを用いて1.9μm帯において40Wのピークパワーを有するパルス発振を得ることができた。省電力型ファイバレーザとして、エネルギ効率の極めて高い研究成果である。 波長チューニング機構に関しては、従来、ファイバに機械的に圧力を加えて周期構造を形成していたのを磁力で結合効率を制御する機構に変えた。今回、このメカニズムをTmファイバレーザ共振器内に挿入することで1.9μm帯での波長可変実験を行い、発振波長のシフトを確認できた。得られた波長可変範囲は機械的調整で実現した値には達していないが、従来と異なり電気的制御が可能となり精度や再現性が大きく向上した。
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今後の研究の推進方策 |
ピークパルスパワーの向上を目指して、ファイバの偏平化技術をさらに進め、共振器Q値のオンオフ比を改善する。さらに、通信波長帯半導体レーザを励起光源としている強みを生かして、駆動波形制御による利得スイッチングをQスイッチング技術と組み合わせる予定である。今後、応用分野を広げられるような、さらなるピークパワーの向上を進める計画である。 波長チューニングについては現在さまざまなアプローチを行っている。特に、従来の単一モードファイバに形成するLPFGではなく、モード多重伝送システムで開発が進められている少モードファイバを活用し、波長可変範囲の広いバンドパスフィルタをファイバ内で完結する構造を目指している。
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