量子力学の原理に基づき究極的に安全な安全性を保証する量子暗号(正確には量子鍵配送-QKD-)の研究が進められている。本研究課題は、本代表者研究者考案による差動位相シフト量子鍵配送(DPS-QKD)と呼ばれるQKD方式の性能向上及びその周辺技術に関する。この研究課題に関し、主に以下の項目を実施した。なお、最後の2項目がH26年度に主に行った内容である。 1.現実的光源を用いたDPS-QKDの性能評価:従来の研究では理想的光源を想定した盗聴法が検討されていたのに対し、位相揺らぎのある現実的光源を用いたDPS-QKDの盗聴耐性を検討した。その結果、従来想定よりも長距離化が可能であることを明らかにした。 2.強度変調DPS-QKD: 信号光パルス列をフレーム化し、各フレームの平均光子数をランダムに割り当てる改良方式の提案/性能評価を行い、従来方式より長距離化が可能という結果を得た。 3.量子/古典多重伝送システム: QKDシステムでは、量子状態を伝送する量子チャンネルと制御情報を伝送する古典チャンネルが用いられる。この2つを時間または偏波または波長多重伝送するシステムについて検討し、量子チャンネル劣化が軽微にとどまる古典チャンネル伝送容量を明確化した。 4.測定装置無依存DPS-QKD:近年のQKD研究では、光受信器の不備を利用した盗聴法に対処するため、光受信器の特性に依らないQKD方式(測定装置無依存QKD)が話題となっている。DPSの考え方によりこれを実現する方式を提案した。 5.通常光パワーによるQKD:従来のQKDでは極微小パワーの信号光が用いられており、そのための高度な光受信装置が必要となる。これに対し、通常の光通信の装置構成でQKD機能を実現する方式を提案し、その性能評価を行った。性能自体を従来QDKには劣るものの低コストなシステム実装が可能である。
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