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2013 年度 実施状況報告書

光子の超拡散を用いたランダムレーザーの研究

研究課題

研究課題/領域番号 24560048
研究機関九州工業大学

研究代表者

岡本 卓  九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40204036)

キーワードランダムレーザー / 超拡散 / 多重散乱 / モンテカルロシミュレーション / 時間領域差分法 / 光硬化性樹脂 / スペックル
研究概要

微粒子を分散させた媒質中での光子の拡散状態を解析するモンテカルロ (MC) プログラムに改良を施し、計算できる媒質のパラメータ領域を拡張した。前年度に引き続き、光子の超拡散状態を実現するための媒質構造を探索した。微粒子間の距離分布を変化させるため、多分散の隙間用微粒子をランダムに配置した。この隙間用微粒子の平均粒径・粒径分布・体積濃度や散乱用微粒子の粒径・体積濃度を変化させ、光子が超拡散を起こす構造条件を求めた。その結果、前年度に得られた媒質よりもより超拡散に近い状態を生み出す媒質のパラメータ値を得ることができた。
さらに、時間領域差分 (FDTD) 法とレート方程式を組み合わせた光増幅シミュレーターを用い、隙間用微粒子をランダムに配置した媒質でシミュレーションを行った。その結果、超拡散状態には至っていないが、多分散の隙間用微粒子を加えると、発光スペクトルに現れるスパイクの強度が、隙間用微粒子を加えない場合に比べて高くなることを確認した。
上記のシミュレーション結果を検証するため、実験を行った。光硬化性樹脂にレーザー色素・酸化チタン微粒子・隙間用微粒子(直径が既知のシリカ微小球)を混合し、光増幅ランダム媒質を作製した。今回はあえて超拡散にこだわらず、複数直径の隙間用微粒子の組み合わせによる違いに焦点を当てた。その結果、ある特定の組み合わせにおいて、酸化チタン微粒子が一様に分散した通常の媒質に比べて高いスペクトルピークを持つ発光が観測された。酸化チタン微粒子を特定の不均一性をもって分散させることにより、ランダムレーザーの発光スペクトルピーク強度を高められることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

モンテカルロ (MC) シミュレーションでは、前年度よりさらに超拡散に近い媒質を作り出すことに成功した。しかし、光子の散乱自由行程ヒストグラムにおいて、超拡散となる領域が2桁に達しておらず、さらなる工夫が必要である。時間領域差分 (FDTD) 法では、2次元媒質を用いて通常拡散とは異なる状態を生み出す媒質を作成し、その特徴を明らかにした。実験においては、隙間用微粒子による発光スペクトルの制御可能性を示した。シミュレーションと実験の定性的な結果が一致したことで、光子の拡散状態を変化させてランダムレーザー発光を制御できる可能性が高まった。

今後の研究の推進方策

引き続き、微粒子粉体を用いた光子超拡散構造のモンテカルロ (MC) シミュレーションおよび時間領域差分 (FDTD) 法によるレーザー発振シミュレーションを行う。課題である計算能力の向上のため、GPUを用いた計算手法や並列計算も検討の対象とする。MCシミュレーションに関しては、光増幅を考慮に入れた計算を行い、強い光増幅が得られる媒質構造を探る。FDTDシミュレーションでは、より現実のものに近い3次元媒質でのランダムレーザーのシミュレーションを実現する。媒質体積の拡大が技術的課題となる。
さらに、微粒子を用いたランダムレーザーの作製および発光実験も引き続き行う。発光機構の解明のため、媒質表面の発光位置によるスペクトルの違いを観測する。また、画像センサーにより発光パターンの空間分布も調べる。超拡散状態を実現するために、MCシミュレーションの結果を用い、実現可能な隙間用微粒子の選定を急ぐ。最終的には、超拡散に近い状態でランダムレーザーを発振させ、発振の高効率化の実現、および新たな発光制御法の確立を目指す。

次年度の研究費の使用計画

H25年度に予定していた国際会議への出席をH26年度に繰り延べた。
8月にフランスで開催される国際会議LIP2014に出席し研究発表する際の旅費として使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Laser Emission from Random Gain Media with Bubble Structures2014

    • 著者名/発表者名
      Takashi Okamoto, Shouhei Matsushita, Masanori Takabayashi
    • 学会等名
      The 10th International Conference Series on Laser-light and Interaction with Particles (LIP 2014)
    • 発表場所
      Marseille, France
    • 年月日
      20140825-20140829
  • [学会発表] 光増幅ランダム媒質中の散乱体分布がランダムレーザー発振に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      古川隆章、 高林正典、 岡本 卓
    • 学会等名
      Optics and Photonics Japan 2013
    • 発表場所
      奈良県新公会堂
    • 年月日
      20131112-20131114
  • [学会発表] 泡構造ランダムレーザーの発光特性:空隙サイズの影響2013

    • 著者名/発表者名
      松下蕉平、 高林正典、 岡本 卓
    • 学会等名
      Optics and Photonics Japan 2013
    • 発表場所
      奈良県新公会堂
    • 年月日
      20131112-20131114
  • [学会発表] Random Laser Emission from Gain Media with Inhomogeneously Distributed Scatterers2013

    • 著者名/発表者名
      Takashi Okamoto, Ryosuke Yoshitome, Shouhei Matsushita
    • 学会等名
      The 10th Japan-Finland Joint Symposium on Optics in Engineering (OIE '13)
    • 発表場所
      宇都宮大学
    • 年月日
      20130902-20130905
    • 招待講演
  • [学会発表] Emission Properties of Random Laser Media with a Bubble Structure2013

    • 著者名/発表者名
      Takashi Okamoto, Ryosuke Yoshitome
    • 学会等名
      The European Conference on Lasers and Electro-Optics and the International Quantum Electronics Conference
    • 発表場所
      Munich, Germany
    • 年月日
      20130512-20130516

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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