研究課題/領域番号 |
24560052
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
須田 亮 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80250108)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非線形光学 / バイオイメージング |
研究概要 |
フーリエ変換非線形分光法の高度化において、試料となる蛍光タンパク質の拡散による濃度変動を抑制するため、モリオール溶液を用いた半固定法が有効であることを見出した。高解像度のLCOS形空間光変調器の導入とあわせて、光褪色スペクトル取得における信号のS/N比を大幅に改善することができた。 各種蛍光タンパク質の光褪色スペクトルを計測し、光褪色過程が励起状態からの吸収を発端としていることを確かめた。また、励起状態の寿命に関する知見をもとに光褪色スペクトルの絶対値校正を行なった。 光褪色の初期過程となる励起状態吸収が、寿命の短い1重項励起状態を起点とする場合は、励起光の繰り返し速度が光褪色に影響する。すなわち、ある励起光パルスで励起状態に分布した蛍光分子が基底状態に戻る前に次のパルスによりさらに高い励起状態へ励起され、そこを経由して光褪色に至ると考えられる。現有のフェムト秒レーザー発振器を含め、一般にパルス間の時間間隔は10~12 nsに設定されている。この間隔を半分の5~6 nsに縮めると、1重項励起状態からの吸収は著しく増加するが、寿命の長い3重項励起状態からの吸収は殆ど変化しないはずである。このような推察をもとに、パルス間隔を縮めて光褪色量を計測したところ変化が認められず、3重項励起状態を経由して褪色している可能性が高いという結論に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料となる蛍光タンパク質の固定法の確立と高解像度のLCOS型空間光変調器の導入により、光褪色スペクトルの取得が容易となったものの、周囲の振動や音などが計測に悪影響を及ぼし、定性的には問題ないが定量的には公表できる段階でないデータがいくらか残されている。このため未だ成果がまとめられていない。環境を整備した後、再度実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
適応制御法により、光褪色を軽減した蛍光発光に最適な2光子励起法を見出す。適応制御法とは、空間光変調器によって励起光に与える振幅・位相変調を試行錯誤的に変化させて、目的とする事象が最大となるような振幅・位相変調関数を求めていく方法である。ここでは、各蛍光タンパク質に対して、光褪色を起こさずに2光子励起蛍光が最大となるような振幅・位相変調関数を求めていく。 フーリエ変換非線形分光法で計測した光褪色スペクトルは、それぞれの蛍光タンパク質に固有の特性である。これに対し、適応制御法で得られた結果は装置に固有な特性を含む。ここでは、両者を比較することにより結果の妥当性を検証する。具体的には、蛍光タンパク質の光褪色スペクトルとフェムト秒レーザー光源のスペクトルをもとにして、適応制御を数値計算で実行し、光褪色を軽減した蛍光発光に最適な振幅・位相変調関数を求める。その結果を実験結果と比較・検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
光学素子・部品、電気電子部品、ガラス器具・試薬類などの消耗品費、および成果報告のための旅費、論文掲載費として使用する予定である。
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