研究課題/領域番号 |
24560053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
中山 和也 中部大学, 工学部, 講師 (40434584)
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研究分担者 |
秋山 毅志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80370138)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザー / テラヘルツ / プラズマ計測 / 干渉偏光計則 |
研究概要 |
大型で高密度化するプラズマ装置における核融合プラズマ計測では,波長50μm帯のテラヘルツ(THz)レーザーを用いた新しい計測システムが必要とされているが,光と電波の谷間に位置するこの領域では,光源を含め,計測手法が確立していない.そこで,レーザー発振線の探査,計測手法の開発,その構成要素の開発を進めている.これらと並んで重要な課題は,計測システムの高信頼性を実現するための安定なレーザー発振の確立である.本研究では,長時間安定動作する2波長(48-μm,57-μm)同時発振型CH3ODレーザーの安定化システムを構築する.本年度実施し,得られた研究成果を以下にまとめる. 1. THzレーザーの安定性は,励起レーザーの安定性に強く依存するため,外部シュタルクセル変調方式により励起用9R(8)CO2レーザーの出力・周波数安定化を行った.その結果,出力108.7 Wに対して±0.7 W/10 h.,周波数32 THzに対して±566 kHz/10 h.の長時間安定動作を実証した.更なる周波数安定化のために,セルの入射光学系を複光路構成にし,発生したラムディップを利用することで約2倍の周波数安定度(±223 kHz/h.)を得た. 2. 励起光のTHzレーザー共振器からの戻りは,周波数や出力の不安定さの原因となることから,励起光を斜入射し,その入射角度やビームの広がりを調整し,最適な発振条件を調査した.その結果,入射に用いる凹面鏡の曲率半径を2 m,入射角度を0.11°とすることで,戻り光を約1.5 %に抑えることができた.この条件で,2波長同時発振させ出力変動を測定したところ,1時間程度であるが共振器長を帰還制御することで,48-μmレーザーで±2.6 %,57-μmレーザーで±2.0 %の安定度を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長時間安定動作する2波長同時発振型THzレーザーの安定化システムを実現するために,24年度は,まず励起用CO2レーザーの出力と周波数を長時間安定化し,励起光のTHzレーザー装置からの戻り光対策を行い,2波長THzレーザーの出力を安定化することを計画した.研究実績に記載したように,当初の計画通り研究を進め,次年次以降の研究につなげる成果を得ることができた.よって,目的達成のため順調に研究が進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的を達成するために,今後行う研究課題を以下にまとめる. 1. THzレーザーのヘテロダインビート周波数の安定化: 液体ヘリウム冷却型フォトコンダクター又はショットキーダイオード(SBD)により2波長ビート信号を検出する.ビート周波数の共振器長やガス圧変化に対する依存性を調査する.次に,オフセットロックによるビート周波数の安定化を行い,その安定度を評価する. 2. 光学ダイプレックサによる偏光面の一致: 48-μm,57-μmレーザーは,偏光方向が互いに直交しているため,これを揃える必要がある.現有のマーチン・パプレット型のダイプレックサは,調整器機構が無く変換効率が悪い.そこで,調整機構を追加し,変換効率を上げる. 3. 干渉・偏光計への適用: 最終的には,干渉・偏光計のテストスタンドにて,安定化させた2波長同時発振型THzレーザーの長時間の動作テストを実施し,それを評価する. 以上の研究を推進し,長時間にわたって安定した2波長同時発振を実証し,48-μm,57-μm CH3ODレーザーを計測用レーザーとして確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で開発する励起用CO2レーザー装置は,レーザー媒質としてヘリウムガスとCO2/N2混合ガスを使用する.本年度,日本国内においてヘリウムガスの供給が制限されたことから当該研究費が生じた.次年度以降は,制限が解除されるため実験に必要となる十分なヘリウムガスの購入が可能になる. THzレーザーのヘテロダインビート信号の検出器/ミキサーであるフォトコンダクターは,液体ヘリウムと液体窒素による冷却が必要である.また,レーザー装置に使用する回折格子や出力鏡は,高出力のレーザー光によるダメージを受けるために定期的な交換が必要である.これら消耗品費に加えて,本研究内容に密接に関係する国内外の学会にて,研究成果の発表及び最新の研究情報の収集に努めるための旅費として,本研究費を使用する計画である.
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