本研究は、歯肉色や3次元形態を計測し、その経時的変化の比較により、歯周治療に応用することを目的として、複眼口腔計測システムの開発を行った。複眼口腔計測評価システムによる被験者実験の継続的な実施と、新たな疾患情報の取得に関する検討をすすめ、以下の成果を得た。 1.複眼撮像システムTOMBOをベースにした複眼口腔計測評価システムについて、データ処理の自動化を進め、データ収集の効率化を図った。2.被験者実験を継続的に実施し、各照明・映像モードの収集を進めた。これまでに計測した参照データとの比較を行い、計測に最適な照明・撮像モード、撮影パラメータを検討した。直線偏光照明と直交偏光撮像の効果を精査した結果、内部組織による散乱の影響により深部計測に適さないため、歯肉表面の反射低減の目的にのみ用いることとした。3.光計測技術による新たな歯周疾患情報の取得について検討を重ねた。付着歯肉と歯槽粘膜におけるグリコーゲン含有量の差異に基づいて歯肉歯槽粘膜境を特定する手法として、波長870nmと660nmの分光画像の差分演算の有用性を見いだした。これにより、患者の痛みなどの負担軽減に役立つことが期待される。4.幅20㎜、厚さ5㎜、3×3チャンネルのデンタルミラー型の小型口腔計測システムを試作し、基本的な撮像機能の確認を行った。フィルタ割り当て案を再検討し、リアルタイムに立体視を行えるように可視領域に2チャンネルを割り当てた。5.近赤外チャンネルを工学ユニットに割り当てることにより、メラニン・酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの分布を確認した。目視検査では正確な検証が達成されなかったが、得られた予測結果の妥当性を示唆していた。
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