研究課題/領域番号 |
24560055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
日坂 真樹 大阪電気通信大学, 医療福祉工学部, 准教授 (40340640)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光制御 / 空間ソリトン |
研究概要 |
バルク材料深部の物質構造を高い空間分解能で局所制御可能な新しい3次元光制御法の開拓を目指すために,パルス状空間ソリトン光の対向衝突点において生じる非線形相互作用の物理機構の解明および新しい光学材料の探索を目的としている。本手法は材料深部を高い空間分解能で光計測制御可能であり,学術的には新しい光科学技術の創成,産業的には既存光技術では困難であったバルク材料深部の局所光制御や光加工に貢献できる。本年度は,物理要素技術である(1)パルス状空間ソリトン光の形成,(2)対向パルス衝突点での光学材料との非線形相互作用,の物理機構を解明するために,強誘電性SBN結晶内で誘起される局所光学作用を測定するための実験システムを改良し,基礎実験を試みた。 既存のパルス状空間ソリトン光による光制御システムに組み込むための,(a)動的ホロコーン照明型位相差顕微鏡,(b)第2高調波干渉顕微装置,(c)非接触型局所温度計測装置を構築した。動的ホロコーン照明型位相差顕微鏡では開口数0.55,倍率50倍,作動距離13mmの長作動対物レンズを用いて傾斜照明し,円環絞りを通過させた傾斜照明画像をコンピューターにて画像処理して振幅画像および位相画像を描出するためのシステムを構築した。第2高調波顕微鏡では,チタンサファイアレーザーを光源として強誘電性材料内で第2高調波を発生させ,強誘電体材料の面内走査で自発分極構造を画像化できるようにした。また,空間ソリトン光の対向衝突点(1点)での自発分極の向きを実時間で計測できるようにした。局所温度計測装置では赤外カメラによる温度計測装置を構築した。撮像素子の画素数(320×240)のため観察領域に対する空間分解能が低く,複数枚による画像からの高空間分解能化の処理を検討した。また,SBN結晶はキュリー温度近傍で強誘電特性に大きく変化するため精密温度装置で制御できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究目的では,パルス状空間ソリトン光の対向衝突点において生じる非線形相互作用の物理機構を解明するために,物理機構解明用測定システムの構築および構築システムを用いた基礎実験を試みる予定であった。機構解明用の新たな構築システムとして,動的ホロコーン照明型位相差顕微鏡,第2高調波干渉顕微装置,非接触型局所温度計測装置を構築し,各々のシステムが稼働するところまで実験的に確認している。しかしながら,既存のパルス状空間ソリトン光による光制御システムに組み込む場合,強誘電性SBN結晶周辺の空間的取り回しが良くなく,既存システム自体の再構築を進めている段階である。それに伴い,構築装置を用いたSBN結晶内部に形成されている空間ソリトンの屈折率分布および対向衝突点における自発分極構造の直接観察に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で実施できなかった研究予定内容を引き続き実施するために,まず,強誘電性SBN結晶周辺の空間的な領域を確保し,結晶の6方向から光を照射できるシステムに変更する。それに伴い,空間ソリトン形成用対物レンズの長作動距離化や温度制御用ペルチェ素子構造を変更する予定である。これらの機器の組み込みを速やかに実施し,空間ソリトン光の伝搬経路の屈折率分布形成および対向パルス衝突点の自発分極構造の直接観察,対向パルス衝突点の局所温度分布を計測する。また,結晶内部の局所温度分布を空間分解能10マイクロメートル程度で観察するために,複数の低解像温度画像から空間分解能2マイクロメートル程度の高解像温度画像を再構し,衝突点での局所温度分布を評価する。 また,平成25年度当初研究予定のパルス状空間ソリトン光の対向衝突点における分極の反転機構解明と物理機構のモデル化をするために,対向パルス衝突領域で生じる局所分極反転過程と分極反転領域の大きさ,局所結晶温度分布の実験測定から非線形相互作用による局所構造変化の物理機構を検討する。非線形相互作用による局所構造変化を測定するために,照射ビーム強度,結晶外部電場,結晶温度,ビーム照射時間を媒介変数として結晶内部で形成される局所強誘電分極反転を第2高調波干渉顕微装置およびストロボ照射法で実時間観察し,自発分極の反転分極形成過程や形状・大きさを測定する。また,結晶温度と外部電場に対するヒステリシス応答から分極反転特性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度繰り越した研究費は,強誘電性SBN結晶周辺の空間的な領域を確保するためにパルス状空間ソリトン光による光制御システムを空間ソリトン形成用の対物レンズの長作動距離化や温度制御用ペルチェ素子構造の変更のために使用し,主として,構築した動的ホロコーン照明型位相差顕微鏡,第2高調波干渉顕微装置,非接触型局所温度計測装置を光制御システムに組み込むための改良費に使用する。また,平成25年度当初予算は,非線形相互作用による局所構造変化の実験を実施する上で必要なシリコーンオイルやアルコール,アセトン等の薬品,ストロボ照射用の同期パルス制御器用の電子部品,本手法が適用可能な光学結晶・材料,光学フィルタ等の光学部品,クリーンブース用防塵フィルタ等に使用する。また,得られた成果報告のための学会出張費および論文投稿費に使用する。
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