バルク材料深部の物質構造を高い空間分解能で局所制御可能な新しい3次元光制御法の開拓を目指し,パルス状空間ソリトン光の対向衝突点で生じる非線形相互作用について解明を試みてきた。本手法は材料深部を高い空間分解能で光制御することが可能となり,新しい光技術の創成や材料深部の局所光制御に貢献できる。最終年度では,強誘電性材料などの位相構造物体の観察および対向パルス衝突点での局所温度観察を試み,パルス状空間ソリトン光の対向衝突による光と物質の非線形相互作用についての実験,および非線形相互作用を考慮した有限差分時間領域法による数値解析を実施した。 本研究では,非線形相互作用を実験的に解析するために,長作動対物レンズを用いた走査型位相差顕微鏡と非接触型局所温度計測装置とをパルス状空間ソリトン光を用いた光制御システムに組み入れた。作動距離10mm以上の長作動対物レンズを用いた輪帯照明型位相差顕微鏡で厚みのある材料内部に輪帯照明し,複数の透過円環光強度分布を画像処理することで物体の振幅分布および位相分布を描出した。また,低解像赤外カメラを用いた材料内部の温度計測装置およびサーモパイルを用いた共焦点温度計測装置で材料深部の局所放射エネルギーを検出し,熱を介した光と物質の非線形相互作用を実験的に検討した。さらに,パルス状空間ソリトンの形成およびその対向衝突点での非線形相互作用を解析するために,入射光である基本波とその第2高調波との間で生じる周期的なエネルギー移行を考慮した有限差分時間領域法を開発し,パルス状空間ソリトン光の閉じ込め作用および対向衝突点での非線形相互作用について数値解析で明らかにした。
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