研究課題/領域番号 |
24560056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平川 靖之 久留米工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (80238344)
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研究分担者 |
斗内 政吉 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (40207593)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テラヘルツ計測 / ゴム評価 / 非破壊計測 |
研究概要 |
平成24年度は、まずゴムの等価電気回路導出に関する研究を主に進めた。試料としては、NBRに通常の加硫ゴムを作製するために必要な配合剤のなかで、補強剤であるカーボンブラックを含まない混合ゴム(未加硫)を用意した。年度当初は、インピーダンスZのみを計測できるシステムしかなかったため、計測パラメータは、このZと電流Iのみである。これまでの我々の研究グループによる研究では、加硫時間の進行とともにゴムを流れる電流が増大し、やがて一定値になる。そして、さらに加硫を続けると徐々に電流値が低下するという結果が得られていた(この傾向は、ゴム製造の際に利用されるトルク計測による特性と酷似していることが分かっている)。そこで、本研究では、Zで同様な傾向が観察できるのかをまず確認したところ、電流曲線を水平方向に反転させた特性が得られた。これは、ゴムを電気的な素子として見なして、オームの法則を適応させると、ちょうど電流とZの関係に対応することが分かった。つまり、電気的パラメータを追跡することで加硫反応時のゴムの状況を知ることができる可能性が明らかとなった。そこで、次に、通常の手法では評価困難とされる、自発的に起こるゆっくりとした加硫反応であるスコーチの、ZとIによる評価を試みた。その結果、スコーチが生じやすいとされる状態に数週間混合ゴムを放置すると、自然に加硫反応が少しずつ進んでいることを示唆する結果が得られた。この結果は、国際会議においても発表を行った。 更に詳しく電気的特性を評価するため、R, L, Cを独立して計測できる専用のLCRメータを購入し、カーボンブラックも混練した試料を用いて試みている。また、電気計測を行った試料についてはTHz-TDS計測を行うため、その準備として窒素パージ容器の改造と窒素自動充填システムの改良を行い、内部の光学系も改良することでシステムのSN比向上を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゴムの電気計測については順調に進んでいるものの、THz計測については、24年度にシステムに大きなトラブルを生じ、数ヶ月実験が停止してしまった。そのため、計画通りに計測を行うことができない状態となり、予定に比べて遅れてしまっている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
電気計測については、24年度に導入したLCRメータを用いて詳細に計測を進めると同時に、国際会議等でサジェスチョンを受けている、電源周波数を変えながらの計測も試みる計画である。THz-TDS計測については、装置の大きなトラブルは24年度で解決できたため、電気計測を行った試料について2次元イメージングを含めて計測を行う計画である。2次元イメージングでは高速な試料のスキャンが必要になるため、自動試料ステージの改良を進める。そして、電気計測とTHz計測の両方から検討して等価回路モデルの構築を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
電気計測に関しては、24年度に導入したLCRメータを用いて詳細に計測を進める。試料には、24年度末から用いているカーボンブラックを含んだものも用い、より現実に近い試料について計測を進める。同時に、電気計測を行った試料について、THz-TDSシステムにより2次元イメージングを含む計測を行う。2次元イメージングでは、現状のシステムでは鉛直方向(Z軸)のスキャンに時間を要しており、Z軸方向についても、水平方向と同様なピエゾリニアモーターを利用したシステムへの改造を検討し、高速化を図る。 これらの電気計測とTHz計測データがある程度得られた後に、ゴム加硫反応時の電気的等価回路の導出を試みる。モデル導出ができた場合には、電気計測に用いている電源周波数やLCRメータの計測周波数を変更して再び電気計測を行い、モデルの妥当性について検討を行う。
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