電気計測については、平成26年度はカーボンブラック(CB)を配合したサンプルについて検討を行った。配合量は、大電流が流れることを避けるため、5 phr(phrはポリマー重量を100とした場合の相対重量)とした。サンプル全体のインピーダンスの大きさについては、CB配合量の絶対量が少ないため、CBを含まないサンプルと比較して若干低下している程度であった。直列抵抗成分についてはピークが発生する時刻が早まり、加硫反応完了時には、CB配合時には抵抗成分は全てゼロに近くなることが確認できた。 テラヘルツ計測については、平成24年度にTHz-TDSの新システムが導入されたため、それを用いて実験を行った。結果、計測時間とSNが飛躍的に改善された。従来、SBRのポリマーを用いてCBなしの加硫反応を可視化していたが、今回は始めにポリマーをBRとしてCBなしのサンプルから可視化実験を行った。その結果、SBRと同様に、最適加硫時間付近でTHz光透過率が増大することが再確認された。さらに、CB 5 phr配合サンプルについて同様に計測を行った。最適加硫時間付近で透過率が増大する傾向は見られたものの、各加硫時刻における値の変動が大きく、CBなしのサンプルとは様子が異なることが確認できた。この差異は、何によるものか現時点でははっきりしていないが、CBによる加硫反応進行への影響、導電性のあるCBによる表面プラズモン発生が影響している可能性も排除できない。 本来であれば、電気計測とテラヘルツ計測により、加硫反応中の電気回路を明確に導出する予定であったが、テラヘルツ計測結果に予期しない傾向が見られたことと、電気計測においても時間変化が安定しないサンプルも多かったため、更に計測を重ねデータ蓄積をまず図るべきと考えた。科研費により研究終了後も、引き続き実験を継続し、加硫反応時の電磁気学的モデルを確立したいと考えている。
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