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2013 年度 実施状況報告書

負の屈折率メタマテリアルによるコヒーレント放射光源研究開発

研究課題

研究課題/領域番号 24560057
研究機関公益財団法人レーザー技術総合研究所

研究代表者

李 大治  公益財団法人レーザー技術総合研究所, レーザーエネルギー研究チーム, 研究員 (00373209)

キーワード負の屈折率 / 表面電磁モード / 電子ビーム放射 / 無反射機構 / 共振器
研究概要

真空と誘電体との境界面に沿って伝搬する表面電磁波は、チェレンコフ型の電磁波放射源の開発に重要な役割を果たすことはよく知られていることである。一定の速度で誘電体表面を移動する電子ビームは、電子の速度と同期した位相速度をもつ表面電磁波と相互作用し、また、発振条件を満足させれば、電磁波が増幅されて空間に放出される。そのため、表面電磁波の研究は小型の電磁波放射源の開発に重要であり、特に、大出力テラヘルツ波源への応用研究が活発に行われている。
アメリカの研究者らは、異なる材料の界面で励起される電磁現象を研究し、負の屈折率媒質の表面に電磁波が存在する条件を導出した。しかしながら、その条件は誘電率と透磁率への要求が厳しすぎるので、負の屈折率媒質は数十keVの電子ビームによる小型電磁波放射源の開発には適用できないとがわかった。この問題を解決するために、我々は媒質平板の下に完全導体の基板を使う発想を提案した。完全導体の基板を利用すると、電磁界の境界条件が変わり、それにより誘電率と透磁率への制限を緩めることが可能と考えられる。
理論解析により表面電磁波の分散方程式を導出し、数値計算の手法を用いて分散方程式を解き、分散関係を求めた。また、電磁界ソフトにより理論解析結果を評価した。それにより、完全導体基板を使うことで、従来の誘電率と透磁率への制限を突破することが明らかになり、表面電磁モードが存在できる条件が明らかとなった。それにより、反射機構を持たないチェレンコフ型電磁波放射共振器を提案した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に従い、屈折率が負のメタマテリアルからなる媒質について、表面電磁波の存在条件とその電磁的性質、及びその物理メカニズムを解明した。理論解析とparticle-in-cellシミュレーションにより、表面電磁波の存在条件、即ち、誘電率と透磁率への制限、更にその物理の詳細を明らかにした。その上で、電磁波の群速度とエネルギー速度の特異性、およびその分散関係と屈折率との関係を解明し、メタマテリアルにおける電磁波の伝搬特性とその特異な電磁的性質を理解した。

今後の研究の推進方策

メタマテリアル回折格子による、スミス・パーセル放射並びにコヒーレント放射の物理の基礎を明らかにする。正の屈折率の回折格子の場合と比較しながら、電子ビームからの放射電磁波の特徴、即ち、放射強度と放射角度の関係、電子ビームと電磁波との相互作用のメカニズム、コヒーレント放射の特性などを把握する。そして、負の屈折率、正の屈折率、金属或いは完全導体の各媒質について、電子ビームからの電磁波放射に対する最適な誘電率、透磁率を比較して探求する。その上で、誘電率と透磁率の制御方法を研究し、効率の良いメタマテリアルの作り方を研究する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は、メタマテリアル回折格子を用いたテラヘルツ放射光の理論シミュレーションを行い、実験準備を進める予定であったが、構造の最適化に時間を要したため、実験に必要な計測器、消耗品等の購入が平成26年度にずれたため。
平成26年度に実験に必要な計測器、消耗品等の購入および学会等発表に必要な旅費等に使 用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Cherenkov radiation oscillator without reflectors2014

    • 著者名/発表者名
      D. Li,Y. Wang,M. Hangyo,Y. Wei,Z. Yang and S. Miyamoto
    • 雑誌名

      APPLIED PHYSICS LETTERS

      巻: 104 ページ: 194102-1,3

    • DOI

      10.1063/1.4876758

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Study on two kinds of novel 220 GHz folded-waveguide traveling-wave tube2014

    • 著者名/発表者名
      M.Zhang, Y.Wei, G.Guo, L.Yue, Y.Wang, X.Shi, X.Tang, Y.Gong, W.Wang, and D.Li
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 53 ページ: 036201-1,6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 小型電子線形加速器LEENAを用いたテラヘルツ光源開発2014

    • 著者名/発表者名
      橋本智、陳彩華、小林花綸、川田健二、李大治、天野壮、宮本修治
    • 雑誌名

      電気学会論文誌

      巻: 134 ページ: 495,501

    • DOI

      10.1541/ieejeiss.134.495

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Theoretical analysis and simulation of growth rate and start current in Smith–Purcell free-electron lasers2013

    • 著者名/発表者名
      D.Li、M. Hangyo, Z. Yang, Y. Tsunawaki, Y. Wei, Y. Wang, S. Miyamoto, M. R. Asakawa, and K. Imasaki
    • 雑誌名

      Terahertz Science and Technology

      巻: 6 ページ: 189,205

    • 査読あり
  • [学会発表] 負の屈折率平板表面電磁モード研究2014

    • 著者名/発表者名
      李大治、萩行正憲、宮本修治
    • 学会等名
      第61回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      青山学院大学
    • 年月日
      20140317-20140320
  • [学会発表] グレーティングによるテラヘルツ電磁波放射の新理論2013

    • 著者名/発表者名
      李大治、萩行正憲、宮本修治、今崎一夫
    • 学会等名
      レーザー学会第454回研究会
    • 発表場所
      岡山国際交流センター
    • 年月日
      20131209-20131209
    • 招待講演
  • [学会発表] グレーティングによる放射の理論研究2013

    • 著者名/発表者名
      李大治、萩行正憲、宮本修治、今崎一夫
    • 学会等名
      第74回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      20130916-20130920

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公開日: 2015-05-28  

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