本研究では、従来の電子ビーム放射を用いた電磁波放射の手法に、新たに登場したメタマテリアルを導入し、新型光源を開発する基礎研究を行った。メタマテリアルの導入によりチェレンコフやスミス-パーセル放射を用いた電磁波放射源を対象として、理論解析とシミュレーションとの手法で、放射メカニズムを明らかにし、新たな放射機構を提案した。研究実績の概要は以下に記す。あ)電子ビームと周期構造体との相互作用の解析には、1950年にJ.R. Pierceが築いた理論を利用するのは一般的であるが、我々はそれらの理論の中にミスを見出し、実際の物理的メカニズムを正しく表すことができないことを指摘した。そのうえ、従来の理論と異なる考えを提案し、物理の本質を正しく反映した厳密な理論システムを確立した。い)負の屈折率メタマテリアルにおける電磁波の特徴を研究し、表面モードの位相速度、群速度、エネルギー流れ速度などの伝搬特性を解明した。負の屈折率の場合は、電磁波の群速度とエネルギー速度は特異性を有し、その特徴の屈折率依存性を明らかにした。う)低エネルギーの電子ビームと相互作用できるような電磁波モードを発見した。この電磁波モードは負の屈折率物質に対してのみ現れるモードで、正の屈折率物質に対しては存在しないものである。この電磁波モードの特徴は、従来の誘電体や周期的な溝の構造体などの表面に存在する電磁波モードと異なり、構造体の表面を進行波のように伝播する一方、構造体内部では後進波のように伝播する。これを基づく、外部の反射機構が不要で、新型チェレンコフ電磁波放射発振器を提案した。え)誘電率と透磁率をコントロールできるような人工材料を研究した。金属分割リングで透磁率をコントロールして金属棒で誘電率をコントロールする方法があり、分割リングと棒を周期的に配列することで放射機構用の構造体を作ることができ、一次元、二次元、三次元の構造体を設計した。
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