研究課題/領域番号 |
24560058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田県産業技術センター |
研究代表者 |
梁瀬 智 秋田県産業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (50370242)
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研究分担者 |
葉 茂 秋田県産業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (20533368)
内田 勝 秋田県産業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (90370238)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 液晶 / マイクロレンズ / シリンダーレンズ / 集積化 |
研究概要 |
・第3電極をガラス基板の裏面に配置した電極構造と高抵抗膜を用いて、円形パターン電極径150ミクロンの液晶マイクロレンズアレイの試作・評価を行った。レンズ間の干渉や個々のレンズの独立動作を念頭に電極層を分離した構造を用いた。その結果、矩形波周波数50kHz、V1=3Vrms、V2=10Vrmsの駆動条件でレンズパワー約2000(1/m)、0.1λ以下のRMS収差特性を得た。また第3電極による制御により著しいレンズ特性の劣化なくスムーズにレンズパワーの可変ができることを確認した。V2>V1に駆動条件を設定することで凹レンズ特性を示すことも確認できた。今回試作したレンズアレイの間は30ミクロンとしたが、ほとんどレンズ間の干渉は見られず、さらなる高密度化が可能であることが確認できた。レンズ径を狭めた換算では目標値のレンズパワーは達成されている。 ・パターン電極と同一のITO膜に第3電極を配置した電極構造及び高抵抗膜を用いて、スリット幅100ミクロンの液晶シリンダーレンズの試作・評価を行った。矩形波200Hz、V1=5Vrms、V2=1Vrmsの駆動条件でレンズパワー3000(1/m)程度が得られた。0.1λ程度でのRMS収差でパワー可変が可能であることがわかった。第3電極が無い構造ではレンズパワーの可変量が少なかった。 ・ミリメートルサイズの電極径の液晶レンズでは1MΩ/□であった高抵抗膜を、成膜条件の検討により10MΩ/□まで高めることができた。しかし配向膜の焼成温度の影響が大きいために、レンズデバイス化後の駆動周波数は必ずしも低くならなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の一つである「配光制御機能を持つ集積化された液晶レンズユニット」の創製の基盤となる液晶マイクロレンズおよび液晶シリンダーレンズの試作と動作確認が一通り出来たことにある。 液晶マイクロレンズの試作では、レンズ間の干渉や個々のレンズの独立動作を念頭に電極層を分離した構造を用いたが、狙い通りにレンズ間の干渉がほとんどないことが確認できた。またレンズパワーは目標に達しなかったが、電極径を小さくすることでクリアできる見通しである。これらの基本特性が確認できたことから、次年度の計画している電極径とピッチの検証に進むことができると考える。 液晶シリンダーレンズの試作・評価においても第3電極を持たない電極構造では印加電圧による変化が小さくセル構造への依存性が大きい傾向が見られた。一方、同一電極層に第3電極を設置した場合は、レンズパワーが増大した他、高抵抗層の効果によりレンズパワー可変における特性劣化が小さくなることが確認できた。本検討により第3電極と高抵抗膜を用いた構造により効率良い液晶シリンダーレンズを実現できることがわかったので、基板配向方向による光学特性の検証やパターンサイズの影響などを含めて集積化の準備検証に進める状況になったと考える。 高抵抗膜の抵抗値の制御については、添加材料成膜ガス圧と膜厚によって1桁の向上が実現できた。その一方で、デバイスのパターンサイズが小さい場合はより高い抵抗値が求められると予想される。 これらの状況を総合的に見て、概ね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
液晶マイクロレンズアレイに関しては、パターンサイズの小型化による発生レンズパワーの限界値を探ると共にレンズピッチとレンズ特性の関係を調べる予定である。また正方格子配置、六方格子配置が想定されるレンズアレイ配置に対する基板配向の方向の影響を調べることで、大面積化に向けた均一性の検証を行う予定である。 液晶シリンダーレンズについては、スリット電極方向に対する基板配向方向の関係によるレンズ特性を調べることで大面積化におけるレンズ配置の影響を検証する。また、液晶シリンダレンズアレイの応用例の一つである3D表示への基礎特性の評価を行う予定である。 高抵抗膜については、10MΩ/□の抵抗値は達成できているが、配向膜の焼成温度の影響が大きい特性がデバイス評価時点での再現性としては十分ではない。よって、添加物の種類や割合をさらにコントロールすることで焼成後の抵抗値変化を抑える対策を行う。また集積化に向けてより大きな面積での均一性が求められるため、ターゲットと基板の距離を広げた場合の成膜状況を確認していく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入物品としては、集積化液晶マイクロレンズの試作に用いるガラス基板やフォトリソ用の薬剤の他、評価用の光学部品、電気部品等に充てる予定である。また研究の成果を広く発信するために学会等で発表する。
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