研究概要 |
これまでの結果より、各種金属(Al, Ti, Ni)をショットキー電極として作製した(Al, Ti, Ni)/CdTe/Ptショットキーダイオード素子において、電極材料の違いによるショットキー障壁高さに大きな差は見られなかった。これは、それぞれの金属の仕事関数が、Al:4.28 eV, Ti:4.33 eV, Ni:5.15 eVと異なることから予測される理論的な値からは大きくずれている。そのため、前年度にMg:3.66 eVを用いて素子を作製して、障壁高さを求めたところ、0.57 eVとなり、同様に理論値の2.1 eVより小さい値となった。そのため、フェルミ準位のピニングが起きていることを強く示唆する結果が得られている。このフェルミ準位のピニングは、CdTe結晶の表面状態に大きく依存することが考えられる。そこで、電流同時AFM測定を行い、表面状態の解析を行った。未処理及びHeプラズマ処理、硫黄処理のCdTe結晶表面の解析を行い、電気的特性に差があることを確かめた。この測定では、計測することにより結晶表面が変化する事があるため、測定には多くの技法が必要とされる。今回、この測定技法について、多くの知見を得ることができ、CdTe結晶の電流同時測定技術を確立することができた。しかしながら、その特性の差が、表面状態や表面準位密度とどの様な関係があるのか、未だ解明できていない。また、ショットキー型CdTe放射線検出素子では、時間経過と共に放射線検出スペクトルが劣化するポラリゼーション現象が問題となる。今回、素子に逆方向バイアス電圧を印加したときに流れる電流(逆方向電流)の長時間計測システムを開発し、ポラリゼーション現象と逆方向電流との関係を調べている。その結果、逆方向電流は、逆方向バイアス電圧の印加直後より徐々に増加し、10~20時間ほどで飽和する傾向を示す事がわかった。
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