研究課題/領域番号 |
24560065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤本 晶 和歌山工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (10238610)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 半導体ガスセンサ |
研究概要 |
これまで半導体ガスセンサの過渡応答が,ガスの種類によって異なることを利用して,半導体ガスセンサを用いてガスの種類の識別が可能であることを提案してきた。このガス識別の可能性を実証するために,半導体ガスセンサのヒーターに方形波を入力して温度を時間的に変調し,その際の種々のガスに対するセンサの過渡応答の面積を測定し,予め測定したデータと比較することで,自動的にガスの種類を識別する装置を試作した。 ガスの識別の判定には,マイクロコンピュータArduino UNOを用い,ガスの濃度と過渡応答とから,ガスの種類を特定した。試作したガス識別装置を用いて,メタノール,エタノール,n-プロパノール,n-ブタノールの4種類のアルコールガスの識別を試みたところ,メタノールとn-ブタノールにおいて70-80%の精度でガスの特定が可能であった。 ガスの識別に用いる因子を過渡応答の面積以外にも広げることで,この精度は更に向上できるものと考える。また識別可能なガスの種類も増加すると予想する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回のガス識別装置の試作を通じて,これまで提案してきた半導体ガスセンサの過渡応答を用いたガスの識別の基本的な可能性を示すことができた。今回の試作機は過渡応答の面積を比較するという,極めて単純なアルゴリズムであるにも関わらず,70-80%という髙い精度で2種類のアルコールガスの識別が可能であった。ガスの識別に用いる過渡応答の因子を増やすことで,精度向上とガスの種類の増加が期待できる。 また方形波以外の波形でヒーターを変調した際のガスの識別能の変化をシミュレーションと実験の両方で観測し,ガスの識別に活かすべく検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回のガス識別装置の試作により,ガスセンサの過渡応答を用いたガス識別の可能性を示すことができたが,他方,複数のガスが混在している際のガスの識別が困難であることが課題となってきた。 特定のガスに対するガスセンサの過渡応答の波形で,そのガスに固有の特徴を見出すことができれば,複数のガスが混在する中でも,それらのガスの識別の可能性が出てくる。これまでの手法では複数のガスが混在する環境下で,ガスの種類を特定することが困難であり,これを解決することが新たな課題となってきた。 この課題を解決するために,ガスセンサの過渡応答をフーリエ解析し,ガスの種類による周波数特性の違いを模索し,ガスの識別に繋げる予定である。この目的のために,国内外の試みを調査する。また周波数解析のソフトを購入すると共に,種々の周波数の電力をヒーターに供給する装置を新たに購入する予定である。それらの設備を用いてシミュレーションと実験との比較を続けて複数のガスが混在する環境でのガスの識別の糸口を見出すべく努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主な使途を以下に列挙する。 複数のガスが混在する環境での実験と解析を行うために,解析ソフトウェアと発振器を購入する。これに平成24年度の繰り越し額約230千円を用いる。さらにシミュレーションを可能にすべく,シミュレーションソフトを改良するとともに,より多くの計算が可能になるように新たなワークステーションを導入する。これに300千円程度使用予定である。 複数のガスが混在する環境で,安定して実験ができるように,複数のガスの供給系を持つ実験系の整備を行う。これに700千円程度を見込んでいる。 またこれまでの研究成果の報告と,情報収集のための国際会議等の参加に800千円が必要となる。
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