本研究は、1つの検出媒体によって熱中性子から高速中性子にわたる広い範囲の中性子を測定できる輝尽性蛍光体の研究・開発を行うものである。このため、24年度では輝尽性蛍光体KCl+Eu2+に中性子有感物質LiFを混合したものに高速中性子検出用ラジエータとしてポリエチレンを分散させたものを製作し高速中性子照射実験を行った。25年度では母体に中性子有感物質を含む輝尽性蛍光体SrBPO5:Eu2+(SBP)にLi2B4O7(LBO)を混合したものにポリエチレンを分散させたものを製作し高速中性子照射実験を行った。これらの結果を受け、26年度は中性子との核反応の結果生じた2次荷電粒子によるエネルギー付与を相対論を用いて計算すると共に、幅広いエネルギーの中性子検出に対してどの方法が有効かを検討した。24年度ではラジエータの重量比が5%のときが最適であることが判明したが、ラジエータがない場合との差は数%であり、ラジエータがなくても高速中性子検出が可能である。25年度の場合はラジエータがない場合が最も高感度であることが判明した。すなわち、当初の目的であった「1つの検出媒体によって熱中性子から高速中性子にわたる広い範囲の中性子を測定」することは両媒体で達成可能であることが分かった。26年度の検討によると、SBP+LBOの場合、ポリエチレンがなくても高速中性子検出可能であるのは、本媒体に酸素原子が多く含まれており、これと中性子の核破砕反応によって生じたアルファ粒子によるエネルギー付与が寄与するためであることがわかった。両媒体の比較では、中性子感度はKCl+LiFの方が上回っているが、位置分解能はSBP+LBOが上回っていることが判明した。つまり、線量測定用としてはKCl+LiFが、イメージング用としてはSBP+LBOが適していることが結論された。
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