研究課題/領域番号 |
24560070
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 淳 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (30344154)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素エネルギー / 水晶振動子 / 燃料電池 / 水素漏洩検知 / 漏洩水素濃度測定 / 高速応答 / 粘性計測 / センサ |
研究実績の概要 |
水晶振動子を測定子とする水晶摩擦圧力計(Qゲージ)の出力を絶対圧力で割ることで圧力校正した値(Qゲージ比)について温湿度の影響を調べた。温度を20℃から50℃、また湿度を30%から0%へと同時に連続的に変化させた際のQゲージ比の変化に対し、湿度を考慮した温度依存性の近似に用いた三次関数から求めて測定値から相殺して校正した結果、上記条件の場合のQゲージ比の変化を水素濃度換算で1vol%以下に抑制できた。 しかしながら水素濃度換算で1vol%の変化は水素漏洩気検知器のバックグラウンドとしては十分に小さいとは言えないため、さらに温度の影響を低減する方法として、新たに開発された温度変化の小さい(温度安定型)水晶振動子を測定子としたセンサ(Qセンサ)を用いて、その出力に対する温度の影響を調べた.Qセンサの出力は測定する気体の圧力の他,粘性及び分子量にも依存し,電圧として出力する.この電圧の逆数は水晶振動子回路のインピーダンスに相当する.Qセンサを断熱真空装置中に設置し,測定子部分に大気を導入した後,この部分の温度を変えることにより新しい水晶振動子を用いたQセンサのベースラインに対する温度の影響について調べた.湿度0%RHにおいて温度が15℃から50℃に変化した際、この温度範囲におけるQセンサ出力の変化は0.02%であり、水素濃度換算では0.2vol%で、水素漏洩検知の必要検知下限である水素換算濃度1vol.%を検出するのに十分な安定性を持つことが示された。 この温度安定型水晶振動子と湿度成分を除去できる中空糸フィルターを用いることにより温度及び湿度の影響を低減し、屋外でも安定的に水素漏洩検知が可能になることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
はじめに温度及び湿度の影響を低減するため、水晶振動子を測定子とする圧力計であるQゲージ指示値の温度依存性及び湿度依存性を三次関数で近似し、別途測定した温度及び湿度を用いて温度及び湿度による変化をそれぞれの関数から求め、Qゲージ指示値から相殺することにより温度及び湿度の影響を低減することを目指し、その結果温度15-50℃、湿度0-100%RHの範囲においてベースラインの変化量を水素濃度換算で1vol.%以下に低減することに成功した。しかしながらこの安定度は水素漏洩検知器としての最低検知下限程度であるため、やはり水素漏洩の誤報を生じる可能性があるため、さらに温度及び湿度の影響を低減する必要がある。 そこで温度の影響を低減するため温度による出力の変化が小さい「温度安定型」水晶振動子を利用することとしたが、その使用に当たっては、改めて特性を調べることが必要となったため、本年度の目標である、「温度及び湿度が同時に変化する場合に温湿度の影響を低減する」方法を確立すすことができなかった。温度安定型水晶振動子を用いれあば温度の影響を水素漏洩の誤報が生じないレベルにまで低減することが可能であることはわかったが、湿度の影響を低減するための方法である中空糸フィルターを組み合わて温度及び湿度が同時に変化する場合の影響を調べるまでには至らなかった。 しかしながら26年度の研究において温度安定型水晶振動子を使用するに当たってはこの水晶振動子に接続される発振回路及びアンプの温度特性が大きく影響していることからこの部分の温度特性をも考量することが必要であることが明らかになるなど、極めて有益な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、26年度に引き続き温度安定型水晶振動子の特性についてさらに調べる予定である。これまでに求められていない温度安定型水晶振動子の湿度一定下での温度依存性及び温度一定下での湿度依存性についてそれぞれ調べる。具体的には恒温恒湿器を用い、温度安定型水晶振動子のみをこの中に設置し、湿度一定条件下で温度を15-50℃の範囲で変化させてその出力変化を調べる。また、温度一定条件において湿度を0-100%RHの範囲で変化させて同様に出力変化を調べる。以上は温度安定型水晶振動子と発振回路及びプリアンプ部も同時に設置した状態でも行う。次に湿度の影響を低減するため、湿度除去可能な中空糸フィルターを温度安定型水晶振動子に装着して同様に湿度一定下での温度依存性及び温度一定下での湿度依存性について調べる。この結果において出力の最小値と最大値の差が、水素濃度0.2vol.%換算の変化程度に低減されていることを確認する。 以上の確認の後、屋外の一定箇所に設置し、実際の屋外の温度及び湿度の変化に対して出力がどのように変化するかを調べ、温度及び湿度の影響が、水素濃度換算で0.2vol.%RH以下に低減されていることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の使用予定額を上回る支出がなかったためその差額と平成25年度までの次年度使用額423,221円との総額分の次年度使用額が発生した。平成26年度は外国旅費が想定よりも150,000円程度少なかったこと、また装置等の修理費が不要であったことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表のための海外旅費及び、平成26年度の論文発表に関する諸費用に充当する。また本年度以降の使用予定において物品費での予定計上額が小さいため必要となる物品費に充当していく。
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