最終年度では温度安定型水晶振動子を用いた水素センサを屋外に設置し、外気温度及び湿度の変化に対する安定性を評価した。センサ出力の変動率(R)は水素センサとしての使用を考えると、Rの値として0.33%以下が目標になる。まず初めに行った約40日分の結果ではRは0.28~1.03%であり、目標を達成したのは13%に留まった。そこで水晶振動子に接続するプリアンプへの温度の影響を低減するための対策を講じたが、その効果は十分ではなかった。そこで安定性の改善を、圧力校正により行った。出力の圧力依存性を用いると、24時間屋外測定で求められる圧力変化量から、圧力センサ出力の変化分が計算により得られ、これを測定結果から差し引くことにより圧力校正できる。その結果、実際の測定結果と比較して圧力校正後の結果は変化が小さく、安定性が改善されていることがわかった。 以上の成果は本研究で行った温度及び湿度補正法の開発により達成されたものである。具体的には温度変化に対する出力の変化が小さい、すなわち温度安定な温度安定型水晶振動子や、湿度の影響を抑制するため大気中の水分のみを除去する中空糸フィルターを用いたこと、温度及び湿度または圧力変化に対するセンサ出力の依存性からそれぞれの変化量に対する補正法を確立したことにより屋外使用における温度及び湿度の影響を抑制することができた。 本研究の結果、水晶振動子型水素センサの屋外使用における安定性が改善され、実用化を進めるために必要な性能を得ることができた。
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