研究課題/領域番号 |
24560076
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 規一 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60284551)
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キーワード | 複雑ネットワーク / クラスタ係数 / マルチエージェントネットワーク / 代数的連結度 / ニューラルネットワーク / 収束判定 / 非線形回路網 / 非負値行列因子分解 |
研究概要 |
本年度の主要な成果は,a) 大域クラスタ係数を極大にするネットワークの特徴付け,b) 代数的連結度を最大または極大にするネットワークの特徴付け,c) ある種の非線形方程式の系統的構成法の提案,d) 離散時間二値ニューラルネットワークの収束性判定アルゴリズムの提案,e) 非負値行列因子分解のための修正乗法型更新式の提案と解析,である.a) では,複数のクリークが一つの頂点を共有するグラフが大域クラスタ極大グラフとなるための条件を導出した.この条件は平均局所クラスタ係数の場合と大きく異なっており,大域クラスタ係数と平均局所クラスタ係数の違いをより鮮明にする結果となった.b) では,過去に得られた結果の一部に対してより厳密な証明を与えるとともに,次数3の正則グラフに限定した場合の代数的連結度極大グラフの特徴付けを行った.c) では,ある種の電気回路から導出される非線形方程式の解集合を特徴づけるΩ行列について解析し,それを系統的に構成する一方法を与えた.d) では,離散時間二値ニューラルネットワークが任意の初期条件に対して平衡状態に収束するための条件について考察し,分枝限定法に基づく条件判定アルゴリズムを開発した.e) では,非負値行列因子分解の計算法として広く利用されている乗法型更新式について考察し,YangとOjaによって与えられた11種類の更新式のうちの8種類について,更新式にわずかな修正を加えるだけで大域収束性が保証されることを示した.また,残りの3種類については,誤差関数を修正することによって新たな更新式を導出し,その有界性を証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように,研究計画書に記載した5つのテーマの多くで着実に成果が出ており,成果の一部は国際論文誌や国際会議論文集に掲載された.また,これらに加えて非線形方程式の系統的構成法,非負値行列因子分解のための乗法型更新式の解析,ストリームアルゴリズムの設計など,周辺テーマについても成果が得られている.以上のことから研究は順調に進展しているといえる.平成24年度に完了予定だったテーマを平成25年度も引き続き実施しているが,これは研究の過程で解決すべき課題が新たに見つかったためであり,テーマが広がりを見せていることを意味している.
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様,当初の計画に従って研究を推進していく.具体的には以下の通りである.テーマ1と2については,未解決の課題が残っているので,その解決を目指して理論と数値実験の両面から取り組む.テーマ3については,すでにまとまった成果が得られているので早急に論文としてまとめて国際論文誌に投稿する.テーマ4はテーマ2と密接に関係しているので,テーマ2の成果がある程度得られたら直ちに取り組みたいと考えている.テーマ5については,まとまった成果と未解決課題の両方があり,前者を論文としてまとめると同時に後者の解決を目指して取り組む.今年度は最終年度であるので,最後に本研究の総括を行う.
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