本年度の成果は,a) 完全多部グラフの代数的連結度極大性の証明,b) 短い平均頂点間距離をもつ正則グラフの生成アルゴリズムの提案,c) 大域クラスタ係数を極大にするネットワークの解析,d) マルチエージェントネットワークにおける代数的連結度推定のための分散アルゴリズムの提案,e) 離散時間2値ニューラルネットワークの一収束条件を判定する多項式時間アルゴリズムの提案,f) 非負値行列因子分解のための反復解法の解析,である.a) では,2-switchとよばれるグラフ変換に基づく近傍を考え,完全多部グラフが近傍内のどのグラフよりも高い代数的連結度をもつことを証明した.b) では,与えられた頂点数と次数の下で平均頂点間距離を最小にする正則グラフを自動的に生成するアルゴリズムを提案し,その有効性を数値的に検証した.特に,いくつかの場合では,生成されたグラフの平均頂点間距離が古くから知られている下界と一致した.これにより下界が最小値に等しいことが証明された.c) では複数のクリークが木構造に連結したグラフが大域クラスタ係数極大グラフであることを証明した.平均局所クラスタ係数の場合にも同様の結果が得られていたが,大きな違いは,各クリーク内の頂点数が同一でなくてもよいことである.d) では,マルチエージェントネットワークの代数的連結度を推定するためのアルゴリズムの問題点を指摘し,真に分散的なアルゴリズムを提案し,数値実験によってその妥当性を確認した.e) では,高橋によって与えられた収束条件の判定が多項式時間で行えることを証明した.最後にf)では,乗法型更新と階層的交互最小二乗法の2種類の反復解法について,それら修正版の大域収束性を証明した.
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