研究課題/領域番号 |
24560079
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
長嶋 利夫 上智大学, 理工学部, 教授 (10338436)
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研究分担者 |
末益 博志 上智大学, 理工学部, 教授 (20134661)
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キーワード | 計算力学 / 拡張有限要素法 / 複合材料 / き裂進展 |
研究概要 |
前年度までに開発した二次元XFEM解析プログラムを拡張して三次元問題に適用できるようにした.三次元化の方法としては、二通りの方法を用いた.一つは、二次元三角形要素を板厚方向に押し出すことによって生成される三次元五面体要素を生成する方法(準三次元解析)、もう一つは、三次元四面体要素を用いる方法(三次元解析)である.前者は、二次元解析手法を再利用でき、き裂先端要素(TIP要素)を簡単に得ることができるものの、積層板に垂直なマトリクス割れしかモデル化できない.これに対して後者は、任意のマトリクス割れをモデル化できるものの、四面体の切断パターンが複雑となりTIP要素の定式化が困難である. はり理論などによる参照解がある問題を、二次元、準三次元、三次元解析プログラムで解くことによって、その解析性能の妥当性を確認した.さらに、複数の層間はく離やマトリクス割れを含む実際的なき裂進展解析に適用したところ、陰解法では収束解が得られない現象が多々発生した.そのような場合には、動的陽解法を用いた準静的解析を実施した.その際、マススケール法や載荷速度を大きくすることにより計算時間を短縮する方法について検討した. 準三次元解析プログラムおよび三次元解析プログラムを用いて、CFRP積層板の引張試験を想定したシミュレーションを実施した.その結果は、文献値に記載された試験結果や解析結果とほぼ整合することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CFRP積層板の典型的な破壊は、マトリクス割れと層間はく離が連成した複雑な形態を有する.そこで本研究では、発生位置が予め未知であるマトリクス割れを拡張有限要素法(XFEM)を用いてモデル化し、層間はく離を従来のFEMで用いられているインターフェース要素を用いてモデル化する方法を用いる.これらの手法を、二次元三角形要素、三次元五面体要素、三次元四面体要素と組み合わせて、二次元、準三次元、三次元XFEM解析プログラムを開発した.開発プログラムにおいては、陰解法では収束解が得られない場合にも対処できるように、陽解法解析機能も実装している. 層間はく離とマトリクス割れには、Camanhoらにより提案されたバイリニア型の結合力モデル、岩石力学で用いられるCarolらにより提案された結合力モデル、さらには単純な接触モデルを設定可能である.開発プログラムの相対変位と表面力関係を設定する部分を修正することによって、様々な結合力モデルに対応することができる. 開発した二次元、準三次元、三次元XFEM解析プログラムの検証解析はほぼ終了している.
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今後の研究の推進方策 |
開発プログラムの有効性を実証するために、様々な実問題への適用を進める. 三次元四面体要素を用いたXFEM解析では、二種類の符号付き距離関数を用いた要素の分類が完了していない.TIP要素を定式化するためにこれらの分類が必要である. 現状の開発プログラムの解析結果の可視化処理は、商用プログラム(GLView)を用いている.開発プログラムの実行環境の制約をなくし、多くのユーザが利用できるようにするためには、可視化処理をフリーソフト(Paraview)で実行できるように改良することも今後の課題である. 実際の解析では、シミュレーションは陽解法の利用が主になると考えられる.陽解法の高速化を達成するためのソフトウェアの並列化、最適化が必要である.
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