研究課題/領域番号 |
24560082
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
速水 謙 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (20251358)
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キーワード | 最小二乗問題 / 反復解法 / クリロフ部分空間法 / 制約付き最小二乗問題 / 逆問題 / 薬物動態 / 内部反復 / 画像再構成 |
研究概要 |
1) 内部反復前処理を用いた一般化残差最小(GMRES)法による、大規模疎な最小二乗問題の反復解法(内部反復前処理GMRES法): 優決定問題、および劣決定問題でconsistentな(右辺が係数行列の像空間に含まれる)場合に関して解法の厳密な理論解析、および数値実験について英文誌に投稿した。また、保國惠一氏が本研究に関してSIAM Student Paper Prizeを受賞した。さらに、今まで内部反復に用いていたSOR法を一般化したAORを用いることにより、性能を改善し、その理論的な解析も行った。 2) 制約付き最小二乗問題の新反復解法: 非負制約や箱型制約の付いた最小二乗問題に対して、等価な線形相補性問題(LCP)に変換してから、絶対値を用いた反復解法を適用し、さらに内部反復に(制約なしの最小二乗問題に対する)CGLS法を用いる新しい解法を開発し、その収束性を理論的に示し、従来の射影法より優れていることを数値実験により示した。また、同手法を画像の再構成や、制約付きの不適切問題に適用し、その有効性を示した。 3) 劣決定逆問題に対して複数の解を高速に求めるCluster Newton法: 薬物動態モデルの逆問題において、薬品や代謝物の血中濃度の時間推移などの追加情報が得られた時に、最も適した解を絞り込む新しい手法を開発し、その有効性を数値実験により検証し英文誌に投稿した。同手法は、毎反復で解候補の集団をベータ分布を用いて発生し、追加された観測結果にもっとも近い値を与える解(パラメタ)を絞り込むものである。これにより、従来複数(多数)求まっていた解の中から最も観測データに合うものを合理的に求められるようになり、薬物動態モデルのパラメタ推定において実用的な手法を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) 最小二乗問題に対する反復解法に関しては、従来行ってきた解法の改良に加えて、制約付き最小二乗問題に対して新しい反復解法を開発し、その有効性を示した。 2) 劣決定逆問題に対して複数の解を高速に求めるCluster Newton法に関しては、新たに、追加情報が与えられたときに解を絞り込む有効な手法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
制約付き最小二乗問題の新しい反復解法に関しては、非負制約に関する研究成果を英文誌に投稿し、さらに一般の箱型制約の場合について解法の改良を進める。 また、対称で特異な連立一次方程式に対する有効な内部反復前処理付きのクリロフ部分空間解法の研究を行う。 劣決定逆問題に対して複数の解を高速に求めるCluster Newton法に関しては、能動素子を含むような常微分方程式系モデルや、systems biologyなど新しい応用への適用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
全額執行を念頭に執行を効率的に進めた結果として、若干の残額が生じた。 平成26年度のソフトウェア更新に係る経費の一部に充当する予定である。
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