白色X線を用いた単結晶に対する回折X線プロファイル延性損傷解析システムの構築を目的として、平成25年度までに0次元検出器として半導体検出器SSDを利用した単結晶の弾塑性域における透過回折白色X線の測定およびプロファイル解析についてはほぼ確立することができた。単結晶の測定では回折X線が単一となる場合が多いが、そのような回折X線プロファイルから装置関数成分を除去するための放射光白色X線法における新しい手法を提案した。また、測定ごとに結晶方位をフラットパネルセンサで定めることで測定精度の安定した延性損傷解析を可能とした。 平成26年度は負荷方向に対して[110]方位が45°の傾きを有するアルミニウム単結晶を用いて平行部の両側にノッチを有する試験片を作製し、引張り試験により塑性変形させながらノッチ近傍を高エネルギー白色X線で測定した。負荷方向に対し45°の方向に現れる(222)面と(220)面のピークをそれぞれ測定した。数値解析結果から予測されていた延性損傷の進展方向であるノッチ底から斜め45°の方向に沿って回折X線を測定した。X線回折プロファイルから得られる積分幅ガウス成分から不均一ひずみや転位密度を算出し、塑性ひずみの増加に伴いそれらの値も変化することを確認した。プロファイル解析に必要な装置関数の決定では,エネルギー分散法特有の応答関数などを考慮した方法を用いた。その結果、延性損傷進展に伴い発生した転位セルの回転は、水平面内に比べ垂直面内で大きく、特に負荷ひずみ5%のときの[111]方位に沿った方向の角度変化が大きくなることがわかった。引張負荷によるAl(111)面のすべり活動が転位セルの生成と回転に大きな影響を及ぼしていることが考えられた。本研究により結晶方位と延性破壊の進展挙動に関連があることを確認できた。
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