本研究は,電子複合材料のワイドバンドギャップ化(高効率・非電力化)を目指し,2次電池を有するチタバリ系電子複合材料の性能に及ぼす材料・構造の影響を数値シミュレーション・実験両面から解明するものである.本年度は,検知・駆動用電極を有するチタン酸バリウム積層カンチレバーを取り上げ,圧電検知・応答及び発電挙動に関する理論的・実験的研究を進めた.また,高性能なチタバリ系電子複合材料を見出すため,圧電挙動に関するフェーズフィールドシミュレーション法(結晶粒径・酸素欠陥考慮)の開発・応用も進めた.得られた成果を要約すると以下の通りである. 1.(a) 検知・駆動用電極を有するチタン酸バリウム(BaTiO3)層と銅(Cu)板からなるBaTiO3/Cu積層カンチレバーを作製し,交流電場による先端たわみ・応力および出力電圧・電力を理論・実験両面から解明・考察した.(b) 検知・駆動用電極を有するチタン酸バリウム積層カンチレバーの曲げ振動による出力電圧・電力を解明・考察した.(c) 検知・駆動用電極を有するチタン酸バリウム積層カンチレバーの繰返し集中荷重による出力電圧・電力を解明・考察した. 2.チタン酸バリウムを取り上げ,微視構造の適切なモデル化を行い,Ginzburg-Landau理論および酸素拡散に基づく結晶粒成長フェーズフィールド解析プログラムを開発・応用して,結晶粒微細化及び酸素欠陥導入による高効率・非電力化について解明・考察した. 3.検知・駆動用電極を有するチタン酸バリウム層と2次電池薄膜からなるチタン酸バリウム積層カンチレバーの圧電検知・応答及び発電・蓄電挙動解明を目指し,基礎的研究を進めた.
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