研究課題/領域番号 |
24560089
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
新谷 一人 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00162793)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ材料 / グラフェン / カーボンナノチューブ / グラフェンナノリボン / ピラードグラフェン / 面外変形 / 波状構造 / せん断変形 |
研究概要 |
●グラフェンナノリボン(GNR)の波状構造の解析:GNRの2長辺の一方を固定し他の長辺に対して長手方向に強制変位を与えてGNRのせん断変形の基本的特性を調べた。その結果、せん断変形が増加するにつれてGNR端構造の影響は減少すること、せん断変形と面外変形との間の関係はグラフェンの幅と波状構造の波数に依存すること、せん断変形の増加に伴い波数が変化し波数が増加する際に面外変形が小さくなることが分かった。 ●単層カーボンナノチューブ(SWNT)内のGNRの構造:Talyzinらの実験において生成が確認されている3種類の水素終端されたGNRに対してSWNTの直径を変えてシミュレーションを行った。その結果、SWNTの直径がGNRの幅と炭素-水素原子間距離の和を超えない場合にはSWNT断面が変形して楕円となりGNRはらせん構造をとらないが、SWNTの直径がGNRの幅と炭素-水素原子間距離の和を超えると2種類のGNRがらせん構造をとることが分かった。 ●ピラードグラフェンの変形特性:平成24年度の研究実施計画として交付申請書に記載した1枚のグラフェンに複数のSWNTを配置したモデルの計算では構造体の定量的特性を見出すことが困難であった。そのため、平成26年度の研究実施計画として予定していた2枚のグラフェンの間に1本のSWNTを垂直に配置したモデルの変形特性を調べた。その結果、せん断変形においては、グラフェンのアームチェア方向のせん断のほうがジグザグ方向のせん断に比べて同一荷重に対する変位は小さいこと、荷重-変位曲線に現れる変位変化率の局所的増大はSWNTとグラフェンの結合部に近いグラフェンの面外変形に起因すること、グラフェン面内方向の引張ではSWNTの直径の変化が荷重-変位曲線に影響を与えないが、グラフェン面外方向への引張ではSWNTの直径が大きいほど同一荷重に対する変位は小さいこと分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要欄に記述したように、交付申請書に記載した平成24年度の研究実施計画のうち、第一、第二の項目についてはほぼ計画どおりに研究を行ったが、第三の項目については予定を変更して平成26年度の研究実施計画として考えていたシミュレーションを行った。 平成25年度の研究実施計画に向けての準備の進捗状況が芳しくない。特に、予備的シミュレーションとして位置づけていたSiC基板上グラフェンの構造を取り扱うためのポテンシャル関数を用意することが難しい。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した平成25年度の研究実施計画のうち、 ●Si基板上グラフェンの構造 ●交差GNRのインデンテーションシミュレーション に関する研究を進める予定である。上記の第一の項目に関連して交付申請書に記載した予備的シミュレーション(SiC基板上グラフェンの構造)については、van der Waals相互作用を考慮した適当なポテンシャル関数を準備できる見通しが立たないため中止する。第二の項目については、インデンテーションの対象としてはより基本的な円形グラフェンに対するシミュレーションも行う。また、上記2つの項目に加えて、 ●空孔欠陥を有するグラフェンの安定構造とバンド構造 の研究を第一原理計算により行う。計算にはVASPを使用し、空孔欠陥の大きさを変えたモデルを複数作成して、空孔欠陥の生成エネルギーとバンドギャップを持つ場合の空孔欠陥の幾何学的条件を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じているがその額は1,494円と小額である。平成25年度の使用予定の直接経費と合わせて使用する。
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