●傾斜角を有する2つの矩形グラフェンフレークの間に5員環と7員環から成るStone-Wales欠陥を配置してグラフェンの粒界モデルを作成した。粒界に垂直方向のグラフェンの両端に強制変位を与えて応力‐ひずみ曲線を求めヤング率を計算し、また、き裂発生応力を求めた。その結果、ひずみエネルギーはStone-Wales欠陥に集中し、き裂は7員環の頂点から発生すること、傾角が大きいほどき裂発生応力が大きいこと、粒界がないグラフェンに比べて粒界がある場合はき裂発生応力が15~35%小さくなること、粒界と引張方向の成す角度の増加とともにき裂発生応力は大きくなり、ある角度を超えると一定となることがわかった。
●炭素、シリコン、ゲルマニウムの単原子層の両面に水素が付加されたナノ材料であるグラフェイン、シリケイン、ジャーマネインの引張ひずみ下におけるバンドギャップを計算した。その結果、ひずみの増加とともにグラフェインのバンドギャップは増加するが、シリケインとジャーマネインのバンドギャップは減少しこの傾向はひずみ方向に依らないこと、ジャーマネインのバンドギャップは10%の一軸ひずみ下でゼロとなることがわかった。
●二硫化モリブデン、二セレン化モリブデン、二テルル化モリブデンはグラフェンと似た6角形格子構造から成る層状半導体物質である。この3種類の二カルコゲン化モリブデンのひずみ下におけるバンドギャップを計算した。その結果、二カルコゲン化モリブデンのバンドバンドギャップはそれぞれ有限のひずみの範囲で直接遷移型バンドギャップを有し、その範囲を超えるひずみでは間接型バンドギャップを有すること、バンドギャップの最大値は一軸ひずみの場合に最も大きくなること、二硫化モリブデンではひずみによって硫黄原子の周りの等電子密度面が特定の形状に変化し、その現象が直接遷移型から間接遷移型への変化に対応していることがわかった。
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