研究課題/領域番号 |
24560090
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
松村 隆 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (00251710)
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キーワード | 超高サイクル疲労 / 表面改質処理 / マグネシウム合金 |
研究概要 |
マグネシウム合金AZ61, AZ80,アルミニウム合金の試験片を製作して,試験片平行部に表面改質処理を施した試験片と未処理試験片を用意し,一定応力振幅・通常の湿度条件下(湿度40%以下)とAZ61では85%の高湿度環境下で超高サイクル疲労試験を実施して,それぞれ疲労強度曲線(S-N 曲線)を求めた.その結果,破断繰返し数10^7回以上の超高サイクル領域で,表面改質材と未処理材共に,疲労限度が現れずに疲労強度が低下する現象が現れ,表面改質処理による疲労強度の改善効果が小さいことがわかった.さらに,き裂の発生および初期進展状況の観察を行った.疲労破面の走査型電子顕微鏡観察も実施して疲労き裂発生起点の調査を行い,多くの試験片では,試験片表面がき裂起点であったが,一部の試験片ではき裂起点が内部であった.表面改質材と未処理材の深さ方向の硬さ測定,及びX線による残留応力測定を行い,表面改質処理によって,試験片表面の硬さが増加していること,試験片表面に圧縮残留応力が発生していることがわかった.また,2段多重変動荷重下での超高サイクル疲労試験を行う準備を行った. 表面改質材と未処理材のS-N 曲線,き裂発生,破面観察結果,試験片表面の硬さと残留応力測定結果から,マグネシウム合金AZ61,AZ80,アルミニウム合金の疲労強度向上ならびに疲労き裂発生・進展の抑制効果の検証を実施し,疲労強度向上のメカニズムを調査・検証した.その結果,表面改質処理によって試験片表面の硬さが増加し,圧縮残留応力が付与されてき裂発生抑制効果が生まれるが,表面改質処理によって試験片表面の粗さが増加することによるき裂発生の促進効果によって相殺され,予想より疲労寿命,疲労強度の改善効果が小さかった.そのため,表面改質処理の最適条件の検討,および新たな表面改質処理手法の開発検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグネシウム合金AZ61, AZ80,アルミニウム合金の試験片を製作して,試験片平行部に表面改質処理を施した試験片と未処理試験片を用意し,一定応力振幅・通常の湿度条件下(湿度40%以下)と85%の高湿度環境下で超高サイクル疲労試験を実施し疲労強度曲線(S-N 曲線)を求めたこと,き裂発生と進展特性の調査,き裂発生起点の調査,試験片内部方向の硬さ,試験片表面の残留応力を行い,マグネシウム合金AZ61,AZ80,アルミニウム合金の疲労強度向上ならびに疲労き裂発生・進展の抑制効果の検証を実施できたこと,さらなる疲労強度向上を目指して表面改質処理手法の開発・検討を行ったこと,2段多重変動荷重下での超高サイクル疲労試験の準備が行えたことから,概ね研究計画通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,マグネシウム合金AZ61, AZ80,アルミニウム合金の2段多重変動荷重下及び85%の高湿度環境下での表面表面改質材と未処理材の超高サイクル疲労試験を実施してそれぞれ疲労強度曲線(S-N 曲線)と線形累積損傷則(マイナー則)を用いた累積損傷を求める.き裂の発生および初期進展状況はプラスチック・レプリカ法よるき裂の発生及び進展挙動の観察を行うともに,疲労破面の走査型電子顕微鏡観察も実施して疲労き裂発生起点の特性を行う. 以上の試験結果および平成24~25年度の一定応力振幅・通常の湿度条件下での疲労試験結果,表面改質材の硬さ測定結果,及び圧縮残留応力解析結果などから,2段多重変動荷重下及び85%の高湿度環境下での表面改質材の疲労強度向上ならびに疲労き裂発生・進展の抑制効果を検証し,それらのメカニズムを明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,平成25年の消耗品費として,供試材費500千円,試験片加工費500千円を計上していたが,供試材は材料メーカーと交渉の結果,無償提供,試験片加工費も加工メーカと交渉の結果,無償で行って頂けたため,消耗品費の使用が大幅に減ったためである. 平成26年度は,新たな表面改質処理をメーカに依頼するために,平成25年度からの繰越した助成金を充てる. 平成26年度の助成金は当初の予定通り,供試材費,試験片加工費,学会発表の旅費に充てる.
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