研究課題/領域番号 |
24560090
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
松村 隆 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (00251710)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超高サイクル疲労 / 表面改質処理 / マグネシウム合金 |
研究実績の概要 |
マグネシウム合金AZ61,AZ80,アルミニウム合金の試験片を製作して,試験片平行部に表面改質処理を施した試験片と未処理試験片を用意し,一定応力振幅,または2段多重変動荷重下で,通常の湿度条件下(湿度40%以下)と85%の高湿度環境下で超高サイクル疲労試験を実施して,疲労強度曲線(S-N曲線),線形累積損傷則(マイナー則)による累積損傷を求めた.その結果,破断繰返し数10の7乗回以上の超高サイクル領域で,表面改質材と未処理材共に,疲労限度が現れずに疲労強度が低下する現象が現れ,表面改質処理による疲労強度の改善効果が小さいことがわかった.さらに,き裂の発生及び初期進展状況の観察を行った.疲労破面の走査型電子顕微鏡観察も実施して疲労き裂発生起点の調査を行い,多くの試験片では,試験片表面がき裂起点であったが,一部の試験片では内部き裂起点であった.表面改質材と未処理材の硬さ測定,残留応力測定を行い,表面改質処理によって試験片表面の硬さが増加していること,試験片表面に圧縮残留応力が発生していることがわかった. 表面改質材と未処理材のS-N曲線,き裂発生様相,硬さ,残留応力の観察・測定結果から,マグネシウム合金AZ61,AZ80,アルミニウム合金の疲労強度向上,ならびに疲労き裂発生・進展の抑制効果の検証を実施し,疲労強度向上のメカニズムを調査した.その結果,表面改質処理によって試験片表面の硬さが増加し,圧縮残留応力が付与されて,き裂発生抑制効果が生まれるが,表面改質処理によって粗さが増加することによるき裂発生の促進効果によるき裂発生の促進効果によって相殺され,予想より疲労寿命,疲労強度の改善効果が小さかった.そのため表面改質処理の最適条件の検討,および新たな表面改質手法の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグネシウム合金AZ61,AZ80,アルミニウム合金の試験片を製作して,試験片平行部に表面改質処理を施した試験片と未処理試験片を用意し,一定応力振幅,または2段多重変動荷重下で,通常湿度条件下(湿度40%以下)と85%の高温湿度環境下で,超高サイクル疲労試験を実施し,疲労強度曲線(S-N曲線)と線形累積損傷則(マイナー則)による累積損傷を求め,さらに,き裂発生・進展の調査,硬さ,残留応力測定を行い,疲労強度向上ならびに疲労き裂発生・進展の抑制効果の検証を実施できたことと,疲労強度向上を目指して表面改質処理手法の開発,検討を行ったことから,おおむね研究計画通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
マグネシウム合金AZ61,AZ80,アルミニウム合金の超高サイクル(10の8乗回以上)の疲労試験データの採取には1ヶ月~1年以上の時間がかかることから,引き続き,不足している一定応力振幅,2段多重変動荷重下での表面改質材と未処理材の超高サイクル域の疲労試験を継続して実施する.さらにマグネシウム合金AZ31を追加して同様の検討を行う. 以上の試験結果,及び平成24~26年度の一定応力振幅・通常の湿度条件下での疲労試験結果,表面改質処理材の硬さ測定結果,及び圧縮残留応力解析結果などから,2段多重変動荷重下及び85%湿度環境下での表面改質材の疲労強度向上ならびに疲労き裂・発生進展の抑制効果を検証し,それらのメカニズムを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,平成26年度の消耗品費として,供試材費と試験片加工費等で700千円を計上していたが,供試材は材料メーカと交渉の結果,無償提供,試験片加工費も無償で行って頂けたため,消耗品費の使用が大幅に減ったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,繰越した助成金を,新たな表面改質処理費,試験片加工費,学会発表の旅費に充てる.
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