マグネシウム合金とアルミニウム合金の試験片を製作して,試験片平行部に表面改質処理を施した試験片と未処理試験片を用意し,一定応力振幅,または二段多重変動荷重下で,通常の湿度条件下(湿度40%以下)と85%程度の高湿度環境下で超高サイクル疲労試験を実施して,疲労強度曲線(S-N曲線),線形累積損傷則を求めた.その結果,破断繰返し数10の7乗回以上の超高サイクル領域で,表面改質材と未処理材共に,疲労限度が現れずに疲労強度が低下する現象が現れ,表面改質処理による疲労強度の改善効果が小さいことがわかった.さらに,走査型電子顕微鏡と光学顕微鏡を用いて,破断面の観察を行い,き裂の発生及び初期き裂進展状況の調査を行った.多くの試験片では,試験片表面,または表面付近がき裂起点であったが,一部の試験片では試験片内部にき裂起点が見られた.表面改質材と未処理材の硬さの測定を行い,表面改質処理によって試験片の表面の硬さが増加していることがわかった. 表面改質材と未処理材のS-N曲線,き裂発生様相,硬さの観察・測定結果から,マグネシウム合金とアルミニウム合金の疲労強度向上,ならびに疲労き裂発生・進展の抑制効果の検証を実施し,疲労強度向上のメカニズムを調査した.その結果,表面改質処理によって試験片表面の硬さが増加し,圧縮残留応力が付与されて,き裂発生抑制効果が生まれるが,表面改質処理によって表面の粗さが増加することによるき裂発生の促進効果によって相殺され,予想より疲労寿命,疲労強度の改善効果が小さいことがわかった.
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