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2012 年度 実施状況報告書

ナノスケール複合材料中の格子欠陥力学場解析

研究課題

研究課題/領域番号 24560091
研究種目

基盤研究(C)

研究機関金沢大学

研究代表者

下川 智嗣  金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40361977)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード格子欠陥 / 計算力学 / 準連続体法 / 複合材料 / 原子シミュレーション / 転位 / 粒界
研究概要

平成24年度は,Volterra により提案された弾性体中の格子欠陥の定義に基づき,解析解を用いることなく格子欠陥の力学場を準連続体モデルで表現するために,まず,刃状転位について検討し,その有効性を確認した.そこで,準連続体法を用いて転位の自己エネルギーの粒径依存性を検討するために,格子転位の力学場に対する粒界の影響を調査した.ここで,粒界領域は原子構造を考えず,凝集エネルギーEc,弾性定数C11,C12 = C44 を結晶相のものから変更した弾性体モデルとして考える.ただし,界面近傍で生じるミスフィットひずみを無視するために格子定数a0 は粒内領域と粒界領域で一定とする.粒界の弾性定数が小さくなるほど粒中央に存在する格子 転位の応力場は影響を受け,収縮していることが確認できる.粒界の弾性定数が結晶と等しいGB1では,自己エネルギーは粒径依存性を示していないことがわかり,粒界の弾性定数が小さくなるほど,粒径依存性に近づくことが確認できた.特に,粒界の弾性定数をゼロとしたモデルでは,自己エネルギーの計算に必要な積分範囲を粒径とした場合と一致しており,粒界の弾性定数が,粒内の弾性定数の30%程度の場合,自己エネルギーに明確な粒径依存性が確認できた.しかしながら,金属材料中の粒界の弾性定数は今回検討したような小さな値を持つことはないことが推測できるため,粒界が格子転位の応力場に強くは影響しないことが考えられる.今回はQC法を用いたため,粒界領域は弾性変形のみをする材料となり,粒界領域の局所的な塑性変形による応力緩和は考慮できていない.そのため,今後,粒界における応力緩和を考慮する場合の検討が必要である.
また,弾性定数の異なる延性相と脆性相の積層構造体中の転位の挙動についても原子シミュレーションを実施し,異なる力学環境下における転位の挙動と積層構造体の力学特性の関係を調査した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画通り,準連続体モデルにより格子転位の力学場を解析解を用いることなく表現できることを確認でき,さらに弾性定数の異なる領域近傍の転位の力学場について検討を加えることができた.さらに,弾性定数の異なる延性相と脆性相から構成される積層構造体の力学特性と,その複合材料中を運動する転位の挙動の関係の調査が順調に行うことができており,今後のナノスケール複合材料中の格子欠陥力学場を解析する力学モデルの構築の準備は整いつつある.

今後の研究の推進方策

平成25年度は,昨年度,準連続体モデルにより得られた格子欠陥の力学場に対する粒界領域の影響で検討課題となった,粒界領域の局所的な塑性変形による応力緩和を,平成25年度に導入する計算サーバーを用いた分子動力学計算により評価する.格子転位近傍の力学場によりどのような粒界構造が,その力学場により局所変形できるかを様々な粒界構造に対して検討を加える.また,現在の準連続体モデルは,格子転位の力学場のみ表現可能であるが,異材界面や粒界に存在する界面転位の力学場が取り扱えるように開発モデルの拡張を行なう.格子転位の場合,現実の原子配置を表現する基本格子ベクトルを用いるが,このままでは,界面転位を取り扱うことはできない.そこで,界面を構成する2 つの結晶構造の共通性を示すDisplacement Shift Complete(DSC)格子を用いることを試みる.通常,粒界転位はこのDSC 格子で表現することが可能である.たとえば,ある粒界A よりも方位差が大きな粒界Bは,粒界A のDSC 格子を適用することで,その粒界転位を規定することができる.つまり,基本格子ベクトルで準連続体内の要素内の原子構造を表現するのではなく,DSC 格子を用いて原子構造を表現できるように拡張すれば,粒界転位のバーガースベクトルを含む要素を表現できると考えられる.

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は,効率的に格子転位近傍の力学場と粒界領域の塑性現象の関係を検討するために,計算サーバーを購入する.また,国内学会に参加し,成果報告を行う..

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 分子動力学法を用いたナノスケール構造体の変形メカニズム2013

    • 著者名/発表者名
      宮木智也・下川智嗣・若子倫菜・喜成年泰
    • 学会等名
      日本機械学会北陸信越支部学生会第42回学生員卒業研究発表講演会
    • 発表場所
      福井大学
    • 年月日
      20130308-20130308
  • [学会発表] 原子モデルによるフェライト・セメンタイト異相界面構造の解析2013

    • 著者名/発表者名
      岡部雅史・下川智嗣・若子倫菜・喜成年泰
    • 学会等名
      日本機械学会北陸信越支部学生会第42回学生員卒業研究発表講演会
    • 発表場所
      福井大学
    • 年月日
      20130308-20130308
  • [学会発表] Atomic Simulations of Mechanical Properties of Multilayered Composites with Brittle and Ductile Phases2012

    • 著者名/発表者名
      T. Shimokawa, T. Oguro, L. Wakako and T. Kinari
    • 学会等名
      ICCM 2012
    • 発表場所
      Gold Coast, Australia
    • 年月日
      20121127-20121127
  • [学会発表] 延性脆性積層複合材の力学特性に対する積層方向依存性2012

    • 著者名/発表者名
      小黒拓真・下川智嗣・若子倫菜・喜成年泰
    • 学会等名
      日本機械学会第25回計算力学講演会
    • 発表場所
      神戸大学
    • 年月日
      20121006-20121008
  • [学会発表] 転位の自己エネルギーに対する粒界の影響2012

    • 著者名/発表者名
      はの木澤 亮・下川智嗣・若子倫菜・喜成年泰
    • 学会等名
      日本機械学会第25回計算力学講演会
    • 発表場所
      神戸大学
    • 年月日
      20121006-20121008
  • [学会発表] 転位の自己エネルギーの粒径依存性に関する一考察2012

    • 著者名/発表者名
      はの木澤 亮・下川智嗣・喜成年泰
    • 学会等名
      日本材料学会分子動力学シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学生産技術研究所
    • 年月日
      20120605-20120605
  • [学会発表] 延性脆性積層構造体の力学特性に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      小黒拓真・下川智嗣・喜成年泰
    • 学会等名
      日本材料学会分子動力学シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学生産技術研究所
    • 年月日
      20120605-20120605
  • [備考] 下川智嗣のホームページ

    • URL

      http://mechs.ms.t.kanazawa-u.ac.jp/%7Esimokawa/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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