研究課題
航空機や高速鉄道車両、原子力機器などの実機を構成する部材では、繰返し荷重の応力・ひずみが多方向に複雑に変動する多軸負荷(非比例多軸負荷)を受けることが多い。しかしこのような負荷に関して、その多軸応力・ひずみ状態や損傷状態を適切に評価する手法はいまだ確立されていない。よって、本研究では、申請者が多軸疲労寿命評価モデルとして提案しているIS損傷評価手法(IS法)を繰返し変動負荷に応用するための改良・強化を行い、実機部材の応力・予測寿命などを瞬時に評価できる簡便で実用性の高い多軸疲労強度設計支援解析ツール開発することにある。平成24年度(初年度)は、(1) 研究調査・データ収集 および (2) 多軸疲労試験を実施し、(1)と(2)で得られた情報およびデータの解析結果を踏まえて、繰返し負荷に適応すべく改良したIS法を組み入れた(3) 多軸疲労強度評価モデル(モデル)の基礎を整備した。平成25年度では、平成24年度から継続して非比例多軸の変動負荷における疲労損傷に及ぼす材料依存性および負荷経路依存性を明らかにするために疲労試験を実施し、得られた試験結果および(1)で得た情報を総合的に評価分析して、非比例多軸の変動負荷で各種損傷パラメータを抽出し、それを反映してIS法の変動負荷対応へと繋げた。最終目標は、多軸疲労強度設計支援解析ツール(ツール)を開発し、設計、維持・管理の現場の技術者が、多軸疲労強度評価を容易且つ機械的にできるようにするための疲労強度評価・解析支援のシステムを構築する。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に予定していた、モデルやツールの開発に必要な材料強度特性情報を得るための材料試験がほぼ実施できた。その具体的な試験内容は、ステンレス鋼および高Cr鋼を対象に主に薄肉円筒試験片に軸とねじりの組合せ負荷を独立且つ任意に与えた変動負荷の試験、さらに内外圧を与えた多軸疲労試験を実施した。なお、得られる試験データは適宜モデルやツールの開発にフィードバックする必要があることから、実験は最終年度も継続する。
多軸疲労強度設計支援解析ツールの開発では、モデルを基に応力・ひずみの時刻歴のデータおよび実験から得られる寿命データ(非比例多軸負荷による損傷増加の材料依存性を示すパラメータαが追加)を入力すると、計算部分はブラックボックスでも最終的に、応力・ひずみの状態(応力・ひずみの大きさと主軸方向の変化)、非比例度、応力・ひずみ範囲、同平均値、さらに予測寿命が出力される。また、出力データからは、非比例多軸負荷の状態を視覚的および数値にて確認することができ、非比例度を考慮した強度評価の要否の判断や予測寿命の瞬時な把握・判断が可能である。すなわち、非比例多軸負荷での疲労に関する専門知識がない技術者でも機械的且つ手軽に解析ツールを扱うことができる点において汎用性が高く、優位性があるツールとして開発する。モデルおよびツールは、負荷経路および多軸負荷場の厳しさの可視化の工夫や、入力メニュー画面の改良、ヘルプ画面などの機能を追加するなど、さらになる汎用性の向上を図る。
年度末使用額の残高が少額であったため、次年度に繰り越した。物品費(実験消耗品費)として使用。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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