ステンレス鋼SUS304とβ型Ti合金を高温の窒素中で焼鈍することにより,表面近傍に窒素が拡散するとともに窒化物が析出し,表面硬度が上昇した.いずれも摺動特性の悪い材料であるため,表面硬度の上昇は耐摩耗性の面で工学的重要性が大きい.また,SUS304は表面硬化で大気中の疲労強度が大きく向上した.一方で,鋭敏化現象によって腐食環境下での疲労強度は減少した.窒素中焼鈍後の後熱処理によって鋭敏化はある程度抑制できるが,完全な抑制は困難であった.β型Ti合金については,表面硬度の上昇にもかかわらず,熱処理中の結晶粒粗大化によって大気中の疲労強度が減少した.
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