研究課題/領域番号 |
24560094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
三宅 卓志 岐阜大学, 工学部, 教授 (70503275)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局所応力測定 / ラマン分光 / 応力・ひずみ測定 / 多軸応力 / 実験力学 |
研究概要 |
まず,カーボンナノチューブ(CNT)を樹脂中に均一分散させる方法について検討した.超音波振動により樹脂中にCNTを均一分散させ,その後樹脂を硬化させた成形膜中のCNTの分散状態を観察した.その結果,温度硬化型エポキシ樹脂の場合,硬化に数時間を要することから,その間に分散させたCNTが再凝集しむらが生じることがわかった. 一方,電界印加による応力センシング部であるCNTの配向方法についても,検討を行った.±25V,1kHzの正弦波による交流電界を間隔200μmの電極間に印加しながら樹脂を硬化させCNTの配向状態を観察した.その結果,交流電界によりCNTの配向が認められたが,長時間印加すると電極周辺にCNTが集中することがわかった. これらの結果より,通常の温度硬化型のエポキシ樹脂では,硬化に時間を要し,CNTの凝集や電極への集中が起こり使用できないことがわかった.これに対し,紫外線照射により数秒で硬化するUV硬化樹脂を用いることにより,繊維の再凝集や電極への集中なしに良好な分散,配向の膜を作製できた. このようにして作製したCNT配向膜が応力を検知できるかどうか,曲げ試験片表面にCNT配向膜を形成し,曲げ治具により応力を負荷しながらラマン分光測定を行うことで検討した.その結果,樹脂からのバックグランド信号が高くS/Nが十分でないものの応力によるピークの移動が認められた. 以上のように,UV硬化樹脂を用いることでCNTの分散や配向を制御した膜の作製ができ,応力成分分離型微小部応力センサの基礎である一方向センサの技術が確立できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
材料系,特に膜材料樹脂の選定に想定以上の時間を要したため. ラマン分光により応力測定する際,センサであるカーボンナノチューブ(CNT)と膜樹脂の散乱ピークが重ならないよう樹脂選定する必要がある.また,硬化に時間を要するとCNTが再度凝集すること,電界により電極にCNTが集まってしまうことから,硬化の速い樹脂を用いる必要がある.このためUV硬化型樹脂を使用しているが,紫外線で硬化反応が開始するUV硬化樹脂には,添加剤から蛍光が発生し,ラマン散乱光をマスクしてしまうものが多くある.しかし市販のUV硬化樹脂が,ラマン散乱測定に際し蛍光を発生するかどうかをあらかじめ知ることが難しく,実際に樹脂を購入してラマン測定により確認するしか方法がない.このため,樹脂選定に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
カーボンナノチューブ(CNT)の配向方向に高い感度を有し,それ以外の方向にはほとんど感度を示さないよう,樹脂粘度や電界強度,電界印加時間の調整によりCNTの配向,分散を制御して一方向センサ膜の最適化を行う. これを三軸センサ膜に拡張するために,まず三方向に分離独立して電圧が印加できる小型電極を検討する.電極間距離が数百μmであるので,エッチングあるいはメッキ積層による方法を樹脂膜の塗布方法とあわせ検討し,これを作製する. これと並行して,応力成分の比を変化させながらラマン分光測定することができる小型の負荷装置および負荷冶具を設計製作する.十字型二軸引張/圧縮もしくはV-ノッチせん断と引張の組み合わせにより二軸応力状態を実現する. これらを使用して,まず既存のひずみセンサとの比較が可能である均一応力場で,開発した微小部センサの性能(応力成分の分離精度;成分間のクロストーク)の評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
接着性や追随性に優れた膜作成のため,粘性や伸びの異なるUV硬化樹脂を購入する. 三方向にカーボンナノチューブ(CNT)を配向させるために,三方向に対向した微小な電極を作製委託する. 応力成分分離の性能評価のための,応力成分を任意に変化させて負荷できる負荷装置を作製する.ラマン分光測定装置の顕微鏡試料台に載せることが可能な小型のこのような負荷治具と二軸負荷装置は市販されていないため,十字型二軸引張りあるいはV-ノッチせん断/引張りが可能な治具および二軸負荷装置を開発する. 開発したセンサとの比較を行うための多軸のロゼットゲージや面内ひずみ測定用消耗品を購入する.
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