研究課題/領域番号 |
24560097
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 新一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60135415)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Fracture / Crack / Energy Release Rate / Stress Intensity Factor / Opening Displacement / Impact Engineering / Bifurcation / Optical Method |
研究概要 |
「高速き裂分岐過程における枝き裂間のエネルギー分配に関する実験的研究」を実施し、以下に示す成果を得た。 (1) 平板試験片中における分岐切欠の開口変位と応力拡大係数測定: 静止分岐き裂のき裂開口変位と応力拡大係数を測定した。これにより、枝き裂の開口変位の振る舞いが明らかになった。この結果を、日本実験力学会(2012年)において公表した。 (2) ホマライト100中の高速分岐き裂における枝き裂間のエネルギー解放率の配分; ホマライト100中の高速分岐き裂の中から、ひとつの枝き裂のCODが√rに比例するき裂を選び、そのエネルギー解放率を測定した。この結果を、日本実験力学会(2012年)において公表した。 (3) ガラスに発生するき裂に関する実験的研究: 高速進展き裂を発生させるガラス中の残留応力を3次元的に測定した。研究結果を、The 15th International Conference on Experimental Mechanics (ポルトガル, 2012年)で公表した。 (4) PMMA中の高速分岐き裂における枝き裂間のエネルギー解放率の配分; PMMA中の分岐き裂の中から、ひとつの枝き裂のCODが√rに比例するき裂を選択し、エネルギー解放率を測定した。この結果は、The 9th International Conference on Advances in Experimental Mechanics (イギリス, 2013年)において公表予定である。 (5) 分岐切欠き先端におけるき裂進展方向と応力拡大係数の測定: 分岐切欠き先端にき裂を発生させ、その進展方向と切欠き先端応力場を測定した。The 30th Danubia-Adria Symposium on Experimental Mechanics (クロアチア, 2013年)において公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」を選択した理由を以下に記す。 理由1: 枝き裂のエネルギー解放率の測定に成功している。 高速進展き裂が2つに分岐した直後の顕微鏡写真から母き裂と2つの枝き裂のき裂開口変位を測定した。それらのき裂の中から、一つの枝き裂のき裂開口変位がき裂先端からの距離rの1/2乗に比例するものを選び出し、その枝き裂のエネルギー解放率を動的線形破壊力学の理論式を用いて算出した。また、母き裂の開口変位を測定し、動的線形破壊力学の理論式を用いて全エネルギー解放率を測定した。その結果、2つの枝き裂のエネルギー解放率を求めることが実証できている。また、この結果は、日本実験力学会2012年次大会(豊橋)とThe 9th International Conference on Advances in Experimental Mechanics (イギリス, 2013)において公表または公表予定である。 理由2: 静止分岐切欠きを用い、枝き裂先端近傍の応力場と変位場、枝き裂先端から発生するき裂の進展方向を明らかにしている. (1) 枝き裂のエネルギー解放率を測定する際には、「き裂先端にどの程度の距離まで近づいて測定しなければならないか」を明らかにした。これにより、高速分岐き裂の枝き裂のエネルギー解放率の測定方法が確立した。この結果は、日本実験力学会2012年次大会(豊橋)において公表された。 (2) 高速き裂が分岐する方向とき裂先端応力場との関係は、KalthoffによってV型切欠を用いて明らかにされた。本研究では実際の分岐き裂により近いY型切欠を用い、き裂先端応力場と分岐方向の関係を明らかにした。この成果は、The 30th Danubia-Adria Symposium on Experimental Mechanics (クロアチア, 2013)において公表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに研究を遂行する。 1.平成24年度の研究において明らかになった事柄を、国際会議で公表する。The 9th International Conference on Advances in Experimental Mechanics (イギリス, 2013)、The 30th Danubia-Adria Symposium on Experimental Mechanics (クロアチア, 2013)。 2.アラルダイトB中の高速分岐き裂において、一つの枝き裂の開口変位(COD)がき裂先端からの距離rの1/2乗に比例するき裂を選択し、エネルギー解放率の分配を明らかにする。平成24年度に明らかになったPMMA、ホマライト100の結果と合わせることにより、動的破壊力学の実験において標準的に使用される3種類の材料中の高速分岐き裂において、一つの枝き裂の開口変位(COD)がき裂先端からの距離rの1/2乗に比例する場合のエネルギー解放率の分配を明らかにする。 3.十分発達した高速分岐き裂のき裂開口変位を測定し、2つの分岐き裂のエネルギー解放率を求める。これにより、十分発達した分岐き裂の枝き裂のエネルギー解放率の比を明らかにする。 4.高速分岐き裂を試験片両面から同時撮影した写真から、枝き裂が板厚方向に貫通した2次元分岐き裂を抽出する。それらのき裂のエネルギー解放率を測定し、2次元貫通分岐き裂におけるエネルギー解放率の分配比率を明らかにする。 5.上記の測定結果をもとに、高速分岐き裂の2つの枝き裂がもつエネルギー解放率の比率を総合的に検討する。特に、動的破壊靱性値のΓ曲線との関係、及び、分岐過程の3次元性との関連を明らかにする。得られた結果は、国内学会、国際会議、ジャーナル等で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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