研究課題/領域番号 |
24560098
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森田 辰郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90239658)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | FPB / プラズマ処理 / DLC / 極短時間熱処理 / チタン / 摩擦摩耗特性 / 機械的性質 / 疲労強度 |
研究概要 |
当初の研究計画に基づき,プラズマ処理,極短時間熱処理,微粒子衝突処理(FPB),DLC被覆およびそれらの複合処理の効果について系統的に検討した. FPB処理については,純チタンおよび鉄鋼材料を供試材として各種実験を系統的に実施した.具体的には,衝突粒子径3種類および噴射圧力2種類の組み合わせでFPB処理を純チタンに施し,処理条件と表面層の組織形態,ナノ結晶粒径,表面硬さ,硬さ分布,残留応力等を系統的に調べた.また,機械的性質および疲労強度に及ぼす効果についても併せて調査した.特に,未破断の試験片断面上で表面層に進展が抑制された内部き裂の存在が確認され,この抑制効果により疲労強度が52%と大幅に改善することが示された.鉄鋼材料については,母材硬さを焼入れ焼戻しにより7段階に変化させた後,衝突粒子径2種類および噴射圧2種類の組み合わせでFPB処理を行い,純チタンと同様に表面性状に関する検討を行った.表面近傍の性状に関しては,硬さや残留応力の測定だけでなく,TEM観察,SEM観察およびEBSD分析を通じて詳細に調べた.その結果,統一的な見解が得られていなかったFPB処理による表面層の形成機構や,工学上重要な処理条件と表面硬さ,硬化層厚さおよび残留応力値との関係について明快に説明された. その他,チタン合金についてはプラズマ処理,極短時間熱処理,FPB処理およびそれらの内の2処理から成る複合処理が,表面層の性状,摩擦摩耗特性,機械的性質および疲労強度に及ぼす効果について検討した.さらに,機械構造用合金鋼についてプラズマ処理,DLC被覆およびそれらの複合処理の効果について系統的に調べた.その結果,上記複合処理は耐摩耗性を大幅に改善するだけでなく,摩擦係数のさらなる低下をもたらし,同時に機械的性質の悪化なしに疲労強度を大幅に向上させることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように,現在までにプラズマ浸炭および窒化処理,極短時間熱処理(チタン合金),FPB処理,DLC被覆およびそれらの複合処理により,各種チタンおよび鉄鋼材料の表面改質や母材部の組織制御を行い,表面層および母材部の性状に関する詳細検討,摩擦摩耗特性,機械的性質および疲労強度に及ぼす効果について系統的に実験結果を蓄積した. 得られた知見については,英文論文5件(内2件については,平成25年4月および7月に発行),解説記事3件(内1件は平成25年5月に発行)および講演発表1件を通じ,積極的に公開した.また,平成25年度に2件の招待・依頼講演を行う予定となった.さらに,2件の国内発表を5月に,1件の国際会議での発表を6月に予定している.以上の実績が示すように,当該課題に関しては有用な結果を得ており,当初研究計画を十分に達成したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
得られた実験結果に基づき,当該研究の2年目に当る平成25年度には,以下に示す3つの研究に焦点を絞って研究を推進する. 1.平成24年度には,水素添加量とDLC層の硬さや無潤滑下での摩擦摩耗特性について検討した.しかしながら,上記の点に関しては必ずしも十分な説明に至らなかった.そこで平成25年度には,さらにDLC層の特性に関するより詳細な検討をTEM観察,スクラッチ試験および潤滑下での摩擦摩耗試験等を通じて進める. 2.DLC被覆した鉄鋼材料において,摩擦摩耗特性および疲労強度の改善上,下地処理の効果は顕著であった.この結果を踏まえて,平成25年度には焼入れ焼戻しを行った鉄鋼材料を供試材とし,これに下地処理として長時間の窒化処理等を施して厚い硬化層を形成させることで,DLC被覆材の高接触応力下での摩擦摩耗特性および疲労強度のさらなる改善を目指す. 2.チタン合金については,プラズマ処理後のFPB処理により耐摩耗性および疲労強度の顕著な改善が達成された.また,同材については極短時間熱処理後のFPB処理が疲労強度の大幅な改善をもたらした.これらの結果を考慮して,平成25年度にはプラズマ処理,極短時間熱処理およびFPBから構成される複合処理の効果についてさらに検討を行い,耐摩耗性および疲労強度の大幅な改善を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,上記実験の遂行上必要な各種物品費,並びに得られた研究結果の公開のための費用等として適切に使用する.具体的には,各種物品費として研磨紙,試験片作製費,プラズマ処理費,データ解析・整理用のパーソナルコンピューターおよびソフトウエア購入費等として使用する.研究結果の公開費用としては,論文投稿料,学会参加費,旅費(国際会議1回を含む)を予定している.また,プラズマ処理およびDLC被覆処理に立ち会うための出張旅費を予定している.なお,当該研究に対して申請したな装置は既に平成24年度に購入済みであるため,平成25年度については特に装置購入の予定はない.
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